星空文庫星空文庫の作品リスト 2239

作品抽出: 全46659作

三題噺「消しゴム」「鉛筆」「答案用紙」

「みなさんには殺し合いをしてもらいます」 高校入試の試験会場にいる俺たちを前にその教官は事務的に言った。 ルールは三つ。制限時間は一時間。その間に誰かを殺すこと。教室から逃げることは禁止。 「それでは始めてください」

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三題噺「日記帳」「トランプ」「書きかけのラブレター」

「『今日死』」 それがどうやら俺の未来らしい。 うちの学校にある未来予想部は、この先の未来を百発百中で的中させると有名な部だ。よく裏門近くに黒塗りの車が止まっていて、偉い人が秘密裏に相談をしに来ているんじゃないかと校内でまことしやかに囁かれている。 そんな未来予想部に昨日初めて俺は依頼をしてみた。高校三年の秋を迎えてふと将来に不安を覚えて、「俺って職に就けるのかなぁ?」なんて真面目に考えちゃった、その結果がこれだ。 「今日死って……やっぱ今日死ぬってことだよな?」 未来予想部はこれからの未来を簡潔に教えてくれるらしい。料金は一文字につき200円。他の奴にとっては安いのかはわからないが、少なくとも俺のエロ本を買う金が不吉な一言になったのは間違いない。とにかく今日一日は気を付けて生活しないと―― 「おい、山本!」 「うひゃうぁっ!」

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三題噺「菜食」「アスリート」「積分」

「君に恨みはないが……、部の予算のために消えてもらう!!」 「ちょっと待ったぁぁぁあ!!」 スラッとした長身美少女がジャージ姿で上段蹴りを放ってくる。 あ、死んだ。まさか部の予算争奪戦だかで蹴り殺されるなんて夢にも思わなかった。でも、むさい男に蹴られて死ぬよりはこのポニーテールの可愛い女の子に蹴り殺される方が幸せだよな! あ! もしかしてフラグ? 俺は生き延びてこれがきっかけで彼女との波乱万丈、甘く切ない青春物語が始まるとか? そうか! それなら納得だ! ならば俺はこの蹴りをあえて受けよう! 避ける間もないけどな! と、そうして俺が走馬灯を見るようにキャッキャッウフフな世界に行こうとした瞬間、彼女は突如軌道を変えて床にその足を叩きつけた。 「……なんのつもりだ、司馬」 廊下に直径1mのクレーターを作りながら、格闘美少女は俺の後ろを睨みつける。

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三題噺「青い空」「寒い冬」「いちご」

「なあ……、こんなことやめようぜ?」 植え込みの陰で冷えた体をさすりながら俺は呆れ気味に言った。 「おいおい、何言ってんだ戦友! 宝はもう目の前に迫っているんだぞ?」 前に座り込んでいた圭介はこちらに振り返ると、信じられないというような目で俺を見た。 「いや、だってなぁ……」 その時、向こうの方からセーラー服の女子学生が駆けてきた。 「っ! 来たぞ!」 足音を聞いて姿を確認した圭介が、興奮しながらも小声で声をかけてくる。俺もつられてそちらを見てしまう。 そして、目の前の排水溝から吹きあがる突風が、少女のスカートを勢いよくめくり上げた――。

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三題噺「鐘」「瞳」「童」

夕焼けに空が赤く染まる中、遠くで鐘の音が聞こえた。 「ねえ、聞いてる?」 私はなぜこんな山奥の廃村に来てしまったのだろう。 「私、人と会うの久しぶりなの」 今更後悔してももう遅い。 私はこの子に見つかってしまったのだから。 「私と一緒に、遊ぼうよ」

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三題噺「パン」「殺人」「パスタ」

「俺は、パンなんかじゃなくてパスタが食いたかったんだ……」 ここは取調室。目の前にはくたびれた服を着た中年の男が座っている。 俺はため息をつく。さっきからずっとこの調子だ。 「なに? おたくイタリア料理が好きすぎて殺人鬼になったのかい?」 聞いてからしまった、と思った。しかし、もう遅い。 「●%▽#■×&@!(*><($?」 男の言語が、イタリア語のような言葉に変わった。

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三題噺「白いスク水」「縦笛」「ランドセル」

かれこれ三時間ほど私は悩んでいた。 「……むぅ。悩むなぁ……」 目の前にあるのは二着の水着。一般的にはスクール水着と呼ばれるタイプの水着だ。 ただ、二着の水着には一箇所だけ違う点があった。 「白か、黒か……」 そう。詰まるところ、私は明日に着る水着の色で悩んでいるのだった。

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三題噺「桃太郎」「蚊取り線香」「古いラジオ」

「………なんだ、お前?」 「やぁ!」 俺は突然現われた異質な不審者をなめまわすように眺めた。 「私のことは気にしないで下さいー」 「……そうか。俺は今取り込み中なんだ。邪魔だからどっか行ってろ」 俺が蝿を追い払うように手を振ると、男は顔を輝かせながら嬉しそうに言った。 「おや、蚊でも飛んでますかー? そんな時はー……」 そして、男は嬉々として鞄を漁りだすと 「はい、蚊取り線香ですー」

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三題噺「神様」「中学生」「晴れのち晴れ」

きっとこの子は、たとえ運命が晴れのち曇りだったとしても揺るがない。 道理をブチのめしてでも無理を通しては、晴れのち晴れに変えてしまうんだろうな。 そんな目をしていた。 「話はわかった。つまり、お前はこの世界を作った神様たちの一人で、仲間割れを始めて揉めてるから人間の俺たちにも喧嘩を手伝えと言うわけだ」 「そう。人間は私たちが作った。言わば下僕。それをどう使おうと私のかっふぇふぁいふぁい!」 俺は目の前にいる少女の頬から手を放す。 「それで?」 「だから下僕は下僕らしくって……ちょ、ちょっと待って! つねるの無し! 女の子を虐める子は嫌われるんだよ!」 目の前の白服ワンピースの自称神様は、手をバタつかせながらあわあわしている。

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三題噺「歌」「小悪魔」「虹」

薄暗い体育館に一人の女の歌声が響く。 超高音のソプラノボイス、と言ってしまえば聞こえが良いが、簡単に言ってしまえば超音波である。 最初の一音が響いた瞬間に照明は砕け散り、眼鏡をかけた客のほとんどが眼鏡を買い直す羽目になった。

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三題噺「アルビノ」「便箋」「街灯」

真夜中の噴水広場。 街灯に照らされている場所以外、暗闇で何も見えない。 風も強く、時間が遅いこともあって人通りもない。 そんな中で一人の若い男が噴水のへりに腰掛けていた。 「あー、やっぱ安物の整髪料じゃ駄目かぁ」 ジーンズにジャケット姿の青年は、ぼやきながら風で乱れた髪を整えていた。

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三題噺「社員証」「缶ビール」「悪魔」

俺は目の前の白い悪魔を睨みつける。 あぁ、ちくしょう。 俺はそいつを射殺す勢いで睨み続けていた。 しかし、勝てないことが本能的にわかっているからだろうか。 俺の手はピクリとも動くことはなかった。

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三題噺「座敷童」「双子」「毬」

「おい、双子」 呼びかけられた長身痩躯の双子が嫌そうな顔をする。 「「なんだ、座敷童」」 ハモった声で座敷童と呼ばれた金髪の少女は、途端にその顔をくしゃくしゃにすると双子を睨みつける。

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三題噺「液晶テレビ」「カレンダー」「りんご」

「――五月二十七日、金曜日。とらうまワイドのお時間です」 液晶テレビに映るキャピキャピしたアナウンサーが萌黄色のスーツで挨拶をしている。 男は手に持っていた林檎をテーブルに置くと、日めくりカレンダーを一枚破り捨てた。

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三題噺「鈴蘭」「胡蝶」「タナトス」

――我にタナトス神の加護あれ 手にしたスズランを花から根まですりつぶすと、僕は牛乳パックを手に取った。 ミキサーに牛乳を注ぎ、すりつぶしたスズランを入れる。 最後にハチミツや砂糖を適度に入れてスイッチをONにする。 「ふふ、君の驚いた顔が早く見たいよ」 部屋の片隅にある胡蝶蘭がそんな僕を静観するように静かに咲いていた。

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三題噺「フィルム」「ラジオ」「居てはならぬもの」

「ら、ら、らー……ラジオ! 次は『お』だよ、クロ!」 赤い鳥居が続く階段をクロは相棒のシロと登っている。 「……重し」 「し、し、し、シャボン玉! 今度は『ま』だよ、クロ!」 先に前を歩いているシロが、クロを振り返りながら言う。久しぶりの遠出が嬉しいのかさっきからずっと飛び跳ねている。そのたびに尻尾についた小さな鈴がちりんと音をたてる。

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三題噺「ジュヴナイル」「ノエル」「アルカディア」

「君には選択するチャンスがある」 その男は紳士ぶった口調で僕に話しかける。丁寧な話し方なのに、なぜか声を聞いていると胸がムカムカしてくる。 「今ある才能だけで世界を越える開拓者となるか」 そんな僕の気も知らず、偽紳士の男は続ける。 「今なき才能を求めて世界を旅する探求者となるか」 男が僕の顔をまじまじと見つめながら問いかける。 「君はどっちを取る?」

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三題噺「サボテン」「美女」「拳銃」

砂漠のど真ん中にある町で、僕ら四人は一人の男の話を聞いていた。 「テキーラはサボテンからできている」 男が語る。

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とある"それ"の記憶

――現在。 「"それ"はとてもとても大切なものだったんだ」 一人の老人がバーのマスターにそんな言葉をこぼしていた。 マスターはいつものようにグラスを磨きながら、老人の言葉へ静かに耳を傾けた。

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三題噺「腕枕」「ヴァンパイア」「小指」

男はただ寂しかっただけなのだ。 自分のそばにいて欲しいという、誰もが一度は持つ願いを恥ずかしくて言うことができなかっただけなのだ。 だから、必然にせよ偶然にせよ現われたその少年に男は救われたのだった。

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