三題噺「神様」「中学生」「晴れのち晴れ」
きっとこの子は、たとえ運命が晴れのち曇りだったとしても揺るがない。
道理をブチのめしてでも無理を通しては、晴れのち晴れに変えてしまうんだろうな。
そんな目をしていた。
「話はわかった。つまり、お前はこの世界を作った神様たちの一人で、仲間割れを始めて揉めてるから人間の俺たちにも喧嘩を手伝えと言うわけだ」
「そう。人間は私たちが作った。言わば下僕。それをどう使おうと私のかっふぇふぁいふぁい!」
俺は目の前にいる少女の頬から手を放す。
「それで?」
「だから下僕は下僕らしくって……ちょ、ちょっと待って! つねるの無し! 女の子を虐める子は嫌われるんだよ!」
目の前の白服ワンピースの自称神様は、手をバタつかせながらあわあわしている。
「……お前、今の立場わかってるか?」
「……凄くムカつく人間に凄くムカつく暴力行為を受けている」
(そこまで嫌そうに言わんでも……)
俺は内心呆れながら、
「そうか。じゃあ、俺はこれから学校だから」
少女のお願いを華麗にスルーした。
「ちょ、私のお願い! 逃げるな下僕ー!」
甘いな。自転車に乗ってしまえば俺の勝ちだ。
俺は叫びながら立とうとする少女を一瞥すると、ペダルを大きく踏み込んだ。
「ハッハッハー。所詮は外見中学生少女。自転車に追いつけるわけは……」
直後、視線を後ろから前に移した俺は目を疑った。
「……え?」
後ろにいた少女が目の前にいる。
手が赤く光り不気味なオーラを放っている。
「……逃げるなぁぁぁあ!」
あ、ヤバイ。そう思った時には俺の体は空気の塊に自転車ごと吹き飛ばされていた。
――カラカラと自転車の車輪が回って音を立てる。
どうやら生きてはいるみたいだが、体中がヒリヒリする。きっと擦り傷だらけだろうなとやけに冷静な自分がいる。
顔をあげて先ほどまで少女がいた場所を見る。
クレーター。
まるで隕石が落ちてきたように、すり鉢状の穴が開いていた。
「それで?」
「……出たな神様を騙る暴力おん……ちょい! それ無し! 手光らせるの無ぁし!!」
少女は得意気に赤く光った手を掲げる。
「ふん、わかったようね。大人しく私の……は…、は…、はくちょん!」
あ、ヤバイ。本日二度目にそう思った時、俺の体はまたしても爆風に吹き飛ばされていた
しばらくして全身擦り傷だらけの泥だらけで立ち上がった俺が見たのは、
「あー……生きてるかー?」
自分の顔に衝撃波を放ってのびてしまった間抜けな女の子だった。
三題噺「神様」「中学生」「晴れのち晴れ」