「課長、秘密が守れますか?」 個人的に相談があると言ってきた新入社員の野田にそう聞かれ、人事課長の奥山は心中やれやれと思った。だが、これくらいの無礼に一々腹を立てていては、人事課長など務まらない。「心配しなくていいよ。わたしには守秘義務…
セールスマンはプラス思考じゃなきゃいけねえ。よく言われるように、靴のセール―スマンが裸足の部族のところに行ったら、大喜びしなきゃいけねえ。おれだって、伊達に銀河を股にかけて商売してるわけじゃねえんだ。大抵の惑星じゃあ、うまいことボロ儲け…
謂わば、先に著した「私見 昆虫記」の“外伝”的エッセイで、とりわけ“害虫”にスポットを当てた内容になっております。 「昆虫記」より更にショッキングな描写もあります。 なので、特に虫が生理的に無理な方は、“要・閲覧注意”でお願いします!!!!
舗装の悪い田舎道を、そのバスは走っていた。乗客はカニ・栗・ハチ・石臼である。今しも、バスガイドの格好をしたサルが、マイクを片手に案内を始めた。「え、みなさまぁ。本日はぁ、おとぎ観光バスをぉ、ご利用いただきぃ、まことにありがとぅざぃまぁす…
先週異動してきたばかりの新しいパパが、あたしとママに話があるという。明日は友達のミコと遊びに行く約束があるから早く解放して欲しいけど、今度のパパはちょっと理屈っぽいから長くなるかもしれない。 リビングに行くと先にママが来ていて、パパと…
さあ、どうぞどうぞ、お入りください。座るでも寝るでも空中を浮遊するでも、お好きな体勢で。何か飲みますか。液体でも気体でも何でもありますよ。え、水銀。はいどうぞ。ほう、太陽系は今回が始めてですか。出張のついでに、不動産をご購入なさりたいと…
習字の時間。 左利きの私が、教師から習字は右で書くよう強制された結果、漢字嫌い、国語嫌いになってしまう――という話。 7519文字。
夢の中で見た概念からの逸脱は、きっと不可能なのに。 何をしたってわたし達はわたし達の脳内でしか生きることはできません。
某出版社の文芸雑誌編集部。「編集長、すごい新人を発掘しましたよ!」 興奮を隠し切れない様子で入って来たのは、三十代前半ぐらいのボサボサ頭の男である。 帰り支度をしていた初老の男は、入って来た男を見もせず、ボソリとつぶやいた。「おまえの…