「徳田さん、いよいよ今年、定年ですね。おめでとうございます」邦夫に声をかけてきたのは、大学の後輩にあたる庄野桜子だった。後輩といっても随分若く、まだ60歳そこそこのはずである。「ありがとう。なんとか会社が潰れる前に、定年にたどり着いたよ......
「ぼくのプリンセス、お目覚めの時間だよ」そう言って亜美を起こしに来たのは、アイドルの中越雄二だった。亜美は片目だけ開けて目覚まし時計を確認すると、不満げに口をとがらせた。「もー、今日は日曜日だよー。会社は、お休みー」中越雄二は人差し指を......
若い女性に先導され、小学校低学年ぐらいの少年少女三十名ほどが、その展示室に入って来た。「さあ、みなさん、静かにしてね。ここが『地球の石』のある部屋ですよ」少年の一人が手を挙げた。「先生、質問があります!」「なあに、ヨシユキくん?」「本当に......
「うちでやるディナーショーのチケットが1枚あるんですが、新藤さん、ジャズはお好きですか?」いつも野菜を納品しているホテルの担当者からそう言われ、平八は(来たな)と思った。「あ、いや、とんと不調法でして。ご協力したいのは、山々なんですが......
むかしむかし、あるところに、(意識すると無意識に逆の行動をしてしまう奇癖の持ち主ではあるが、おばあさんに対する愛情では誰にもマケナイと自負している)おじいさんと(そのおじいさんの行動心理を巧みに利用し操作する)おばあさんが住んでいました。