金髪男子と図書館で、
金髪男子と図書館で、
何してるんですか?
そんな言葉は雪子はかけられません!少し段階を置いて語っていいですか?話は変わりまして本当にすいません、これは先日の事です雪子はクラスの推薦で図書委員になりました。まぁ、雪子も本は実際に好きですし良く図書館に通いますそれで、推理小説の本を漁っては読み、そのストーリーに没頭します。まるで、雪子がその本の主人公の探偵の様に事件を解決しているみたいで、お恥ずかしながら、小声で「お前が犯人だ」と結末でつぶやくのです。多分そんな所をクラスの友人の咲ちゃんや、萌恵ちゃんに見られていたのでしょう…中々委員会の椅子が埋まらない、固まる空気の教室の雰囲気に苛立ちを感じて雪子を指名したのです。雪子は確かに本が好きです、しかしそんな委員会なんて立場、苦手なのです。雪子は深いため息を吐きます。
そう言った出来事が終えた後、雪子は校舎を出て大きな広葉樹が根を下ろし、草木の匂いがする花園の近くに建つ外壁に苔の生えた図書館に足を運びました。いつもなら休み時間を利用して本を借りて、教室で読んだり家に持ち帰って読んでいるので、雪子は下校の時間に図書館に立ち寄るのは初めてでした。
休み時間なら、それなりの数の生徒が図書館に居て大きめな声を出していたりするのですが、今、この図書館には誰もいません。時間が止まったようです、ただ受付のコーナーにある四角い時計だけが秒針の針を鳴らしています。雪子は静かにローファーの靴を脱いで木材の素材で作られた靴箱に入れます。その一つの行動に意味もなく気を使ってしまいます。緊張していたのです。さて、雪子は取りあえず委員の初仕事として本棚にある本を並べる事にしました。緑色のカーペットの上を歩いて誰もいない空間が妙に気持ちよく感じてしまいます。本棚と本棚の距離は狭くて、若干ですが本の背表紙を見る時に腰を打ちそうになります。
ある程度雪子は本を並べ終えて、そろそろ推理小説の本を探し出してみようと思いました。最近発売された【くすんだ罪びと】と言う本です、その本は雪子が好きな作家の一人でして、内容もほんのりとした展開から奇抜的な終焉までに至る流れも大好きなのです。その本のありそうなコーナーの本棚に行き、視線を正面に移します。と、雪子大声を出してしまいそうになりました。人がいたのです。
喉まで上がった声をごくりと飲み干して、その人を見ます。頭がきんきらきんの、男子でした。ふむふむ、雪子分かります、こいつはヤンキーです。しかし何で?ヤンキーがこんな図書館に?雪子はふと、目線をその金髪の手に向けます。ん? 焦げ茶色の本を片手で持っているだと、こいつ本を読んでいるのか?雪子はその金髪の読んでいる代物に興味がわいて背表紙の文字を読みます。何々、【くすんだ罪びと】だと、この金髪もしかして雪子がお目当ての推理小説の本を読んでいるとでも言うのか?
雪子は少し驚いてしまいどうやら、可笑しい表情をしていたようです。そしてこの、金髪のヤンキーは雪子の存在に、当たり前ですが、気づいていたらしく雪子の顔を見て鼻で笑いました。雪子は頭にきました初対面である人に対してこの様な態度は許せないです、一刻も早くこの場から立ち去りたく感じました。雪子はクルリと振り向いてその忌々しい金髪ヤンキーに腹を立てて、図書館の玄関の戸を開けて急いで帰りました。また、その苛立ちの中にはあの金髪のヤンキーが、雪子の大好きな本を読んでいた事も含まれていました。
少し長く語ってしまいました!つまりこの様な事がありまして、今日に至るのです。雪子は金髪ヤンキーがまさか先日に続いて、いままさに目の前の机でふてぶてしく本を読んでいる事が信じられません。普通ヤンキーなんて図書館で本なんて読まないでしょう?どう考えたって原付のバイクを改造して、そこら一体の道路でマフラーを吹かしているはずです。それが一人でまじめそうに、黙って本を読むなんてヤンキーに名を汚す者です。
そんなふうに頭を思いめぐらしながら、雪子はカウンターの方にある椅子に座ってチラチラとその金髪ヤンキーを観察していました。
するとこの金髪のヤンキー野郎、まだ雪子の読んでいない、【くすんだ罪人】を片手に収めて左指でペラペラとめくっては、眉も一ミリも動かさないでいます。さっさと読んでしまえ!と心で念じるのと、このヤンキー何やら学ランのポケットをガサゴソとし始めました。雪子は積まれている本に隠れながら、その金髪ヤンキー野郎の行動をうかがっていました、まるで探偵…
取り出したものはメモ帳でした、ヤンキーらしくないと思いながらも続いて観察をします。金髪ヤンキーは本を広げたままにして、メモ帳に鉛筆で書きこんでいます。本に書かれている文字を写しているんでしょうか?
雪子は不思議に思い何してるんですか?と声を出して質問をしたくなります、けれどもそんな言葉は雪子はかけられません!もしかすると、このヤンキーに雪子はボコボコにされるかも分かりません!
そのヤンキーは自ら沈黙を破りました。雪子の今、質問するかしないかの悩みを打ち破る声でした。「この本つまんねーな」な、な、な何ですと!今このヤンキーなんて言いやがった?つまんねーだと?雪子は少々頭にふつふつと熱が上がってきましてので、このヤンキーに向かって。
「つまんねーのはテメェの頭の色だろ!ああ!」
壁のクロスに貼ってある(大声禁止)の張り紙が勢いで揺れてしまうくらいの声量でした。
金髪ヤンキーにはその大きな声にかなり驚いたらしく、身体をビクッと震えて椅子から立ち上がりました。その光景と、こんな大きな声を出した自分自身にも驚いて雪子も恥ずかしくなり、カウンターの机の上に積まれている机の上に隠れてしまいました。多分こんな言葉、親も友達も先生も聞いた事がないでしょう。
金髪ヤンキーにはキョロキョロと図書館内を見渡して、「俺の他に誰かいるのか?」と小さい声で述べました。金髪ヤンキーさん、ここに!ここにいますよ雪子は居ます!あれれ?と言うより気づいていなかったんかい!そんなに雪子は空気なんですか!心の中で雪子は叫びます。
しかし、雪子はさっき金髪ヤンキーが言っていた言葉を思い出します。(この本つまんねーな、燃やすかアヒヒヒ)
雪子は苛立ちました、そのせいか反射的に椅子から立ち上がります。金髪ヤンキーも雪子の存在に気付いた様で、雪子に視線を送りましたがもう怖さなんてありません、この野郎にこの本の良さを伝えなければ、いけないのです!その思いだけが雪子に勇気を与えました、そして金髪ヤンキーのいる方向へと脚は動いていました。
「金髪頭の分際で、この推理小説が面白くないとは、どういうこったい!」
雪子は金髪ヤンキーが使っている丸い机を叩きながら、言ってやりました。
すると金髪ヤンキーは雪子の顔を見ながら、自分の唇に指を添えて何やら考え事をしている様なポーズを取ります。お前は探偵か、何かか!そんな事を思っていると、金髪ヤンキーは意外に低い声で雪子に言いました。
「お前、ブスだな」
全くの予想外の言葉に雪子はポカーンとしてその金髪ヤンキーを見ていましたが、その言葉の意味に気づいて「はぁあああああ!!」本日二回目の大声を出していました。
そして金髪ヤンキー雪子のどでかい声を無視して話し出します。
「おい、ブスよく聞け、この本実際につまんねーだよ」
「貴様まだ言うか…」雪子は奥歯の歯を砕くほどギリギリと歯ぎしりしてしまいます。
「まぁ、いろいろ言いたい事があるが、お前みたいなブスには理解できないから教えんけどな」
金髪ヤンキーは意味が分からないですが、勝ち誇った様に腰に手を置いて鼻で雪子を笑いました。その滑稽な格好に雪子はさらにムカつきます。この金髪ヤンキーの髪を抜いて野郎かと思った程です。そこで雪子はあえて質問をします。
「じゃあさ!じゃあさ!逆に問うけど、お前のお勧めの本言ってみ?昆虫図鑑なら許すけど?」雪子は指をピーンと立てて金髪ヤンキーに向けて指しました。
金髪ヤンキーはその雪子のポーズか必死な顔にどう思ったのか分かりません。ただこの時ヤンキー野郎は、細い腕でお腹を抱えて「お前、ブスのくせに、昆虫図鑑好きなのかよ!面白いわ、つーかお前の腹の中にハリガネムシがいそう」
雪子は堪忍袋の緒が切れる音がしました、それは多分、覚醒した筋肉だったのかもしれません。雪子はその金髪ヤンキーの白いほっぺたに右ストレートねじ込んでやったのでした。
翌日雪子は教室の窓から外を眺めていました。数学の授業でしたが雪子には関係ありません、世界がこんなにも輝いているのに、なぜ人は黒板をみて、訳の分からない公式を解かないといけないのでしょうか?そんな風に漂う空気を見ていると、裏門の方で頭が金髪の奴が何やらガサゴソとしています。昨日、図書館にいたあの金髪ヤンキーでした。雪子がそのヤンキーを見ていると「あぁ倉田先輩だ、今時めずらしい不良少年ね」
雪子の前の席に座っている咲ちゃんが言いました。雪子はなんとなくですがハッとして「そ、そだね」とだけ言いました。不良がめずらしいかどうかは、良くわかりませんが…
咲ちゃんは何かに気づいたらしく「ん?」と言って、雪子に言いました。
「何かほっぺたに白い包帯みたいの着けてない?」疑問の声を雪子に言います。まさか、咲ちゃんも雪子が昨日あの金髪ヤンキーに右ストレートを噛ましたとは思わないでしょう、雪子は苦笑いしながら「不良のくせに、中二病かよ、きめぇーよ!ね?咲ちゃん!」とだけ軽いトーンで咲ちゃんに声をかけました。咲ちゃんは雪子の顔をジーと見てため息を吐いて前を向きました。その後、金髪ヤンキーは生活指導の短パンを履いた筋肉質の教師に連れられて行き、雪子は数学の先生からの指名を受け黒板に立ちましたが問題が解けずありがたく叱責を受けて、重い足取りで席に戻りました。咲ちゃんは「やる気がないならもう、帰れよ」と雪子に追い打ちをかける一言を言いました。
雪子は放課後、図書館によりました。
もちろん誰もいません、居るのは頭を輝いている金髪ヤンキーだけでした。雪子は図書館に入ると新刊コーナーに置いてある雑誌を手に取って、カウンターの中にある椅子に腰かけました。雑誌のページを開いて読みます、しかし時々、視線の方向は金髪ヤンキーの方を向いてしまいます。奴はまだ【くすんだ罪人】の本を読んでいる様子でした。雪子の首に水の玉が浮いてきます、何だか暑くなってきました。雪子はすぐ後ろにあるエアコンのリモコンのスイッチを押しました。けれどもウンともスンとも言いません。調子が悪いのか壊れているのか雪子は知りませんが、ムカつきました。仕方がないので椅子から離れて二重窓のサッシの窓をゆっくりと開けました。外は広葉樹の葉が風になびいて揺れ、太陽の日光がチラチラ動いて見えます。また奥には花園があるので赤い土が風に乗って図書館の中に入ってきます。生地の暑いカーテンがその風力を受けて広がりました。明らかに外の温度の方が涼しいです。雪子は近くの窓を開けて行きます。そのせいでカウンターに置いてあった雑誌のページがめくれて音をたてます。
その時でした「おい、ブス読み終わったぞ」金髪ヤンキーが雪子のそばで立ち、茶色い本を渡すように腕を伸ばしてきました。
何やら上から目線なので雪子はムカつきます。無言でその本を受け取りました。金髪ヤンキーはメモ帳に何かを記しています。
雪子は気になって「何、メモしてんの?」と質問してしまいます。そうするとその金髪ヤンキーはメモに記しながら言いました。
「本の感想書いてんだよ」
雪子はその言葉に「何か、引いちゃいました」と言ってしまいます。
そして金髪ヤンキーは帰って行きました。
こんな調子が何か月か立ちました。相変わらずの金髪ヤンキーは本を読みにやってきます。そして雪子が文句を言うという感じです。そんなある日、生活指導の短パンを履いた筋肉質の教師に「お前、どうやってあの不良と話しをしてるんだ?他の生徒や先生とは全然話さないぞ」と聞かれました。雪子はあの金髪ヤンキー野郎がそんなクラスに馴染めていない可愛そうな奴とは全く知らなかったので「普通の会話です」とだけ言いました。
そして体育館でバトミントンをして、ラケットで羽を叩いて、疲れたので休憩していると咲ちゃんがそばに座って言いました。
「雪子、あんま不良とかかわるなよ、ほどほどにな」と言います。
雪子はその言葉になんとなくですが無性にムカつきます。
「金髪ヤンキーだけど、本しか読まない軟弱だから、大丈夫」雪子は微笑みました。
時計の針は放課後を指します。雪子はいつも通り図書館へと向かいました。カーテンが揺れていました。窓が開いてたのでしょう。そこに金髪ヤンキーが丸い机で本を読んでいました。それは雪子にとって当たり前の風景になっています。雪子が入ってきたのに気付いたんでしょうか?金髪ヤンキーは椅子から立ち上がります。雪子が先に口を開けます。
「暇人が本を読んでます」
雪子の声に金髪ヤンキーは優しく笑いました。しかしそれはどこか寂しそうな目でした。金髪ヤンキーは雪子に言いました。
「いつかブスのお前、言ってたよな俺のお勧めの本を読ませろって」
雪子は「言いました!雪子がその本の感想及び、つまらなさを言ってやります」
その雪子の顔を見て金髪ヤンキーは笑って「明日もってくる!まぁ、感想はゆっくり聞いてやるよ、今日は用事があっから帰るぜ、ゆきこ」
雪子は体中に電気が走った様になります。初めて名前を呼ばれたのです。そう雪子が黙っていると、金髪ヤンキーは帰っていきました。
日が沈み、また新しい日が昇ります。雪子はいつもの様に図書館の扉を開けて中に入りました。と、中は暗く電気もついていません。カーテンも揺れておりません。毎日、先に来ているはずの金髪ヤンキーがまだ来ていません。雪子は静かにカウンターの席に座ります。するとボロボロで表紙の皮が破けそうになった本が一冊置いてありました。そして一枚の紙が乗せてあります。鉛筆で(雪子へ)とだけ書いてあります。今度は本の表紙を読みました。【旅立ち】と大きなしっかりとした黒い文字で書いてあります。雪子は無言でその本を読み始めました。紙をめくります、カサカサなページは雪子の指には合いません。
雪子は本を進めながら思いました。感想を言った時の彼の表情を早く見たいなって
金髪男子と図書館で、