セカンドシーズン
あの忌まわしい事件から一年。両方の頬にコブのある爺さんは、自宅の庭で一心不乱にダンスの練習に励んでいた。
(このコブを取ってもらうには、オニたちが感心するような踊りを見せるしかない。だが、隣の爺さんがやったようなのは、もはや時代遅れだ。見ておれ。わしが最新のヒップホップダンスを身につけた暁には、どんな気難しいオニだって脱帽し、両方のコブをいっぺんに取ってくれるはずじゃ)
「おお、元気そうじゃないか」
そう言って入って来たのは、その隣の爺さんだった。頬のコブがなくなって以来、すっかり自分の容姿に自信過剰となり、年甲斐もなく日サロで真っ黒になった顔にサングラスをかけていた。ジムにも通っているらしく、アロハシャツの前をワザとはだけて、これ見よがしにシックスパックの腹筋をさらしている。
「ふん、若作りしおって」
「いやいや、あんたほどじゃないよ。随分上達したじゃないか」
隣の爺さんはニッコリ笑って、不自然なほど白い歯を見せた。
「ああ。自慢ではないが、その辺のヘナチョコな若者には負けん。首尾よくオニどもにコブを取ってもらったら、天下一舞踏会に挑戦するつもりじゃ」
「ふーん、サードシーズンへの伏線か」
「え、なんじゃと?」
「あ、いやいや、独り言さ。ところで、これはウワサだが、森のオニたちに政権交代があって、新たに選ばれたボスは、踊りが大嫌いらしいぞ」
「そんなバカな。それじゃ、わしのコブはどうなる?」
隣の爺さんは周囲を見回し、声をひそめた。
「良かったら、知り合いのドクターを紹介するよ」
それを聞いたコブのある爺さんが激しく首を振ったため、コブがブルン、ブルンと揺れた。
「バカなことを言うな!そんなルール違反をすれば、ファーストシーズンからのファンが離れてしまう。ええい、ここで悩んでいても始まらん。当たって砕けろじゃ」
「直談判に行くのか。だが、気をつけろよ。オニたちも、以前よりはパワーアップしているからな。なんなら、助太刀してやろうか?」
だが、コブのある爺さんは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「心配には及ばん。ダンスのキレを良くするため、武術の修行もしたのじゃ。オニどもが手荒なマネをするようなら、わしの遊星飢狼拳を一発お見舞いしてくれるわ。はっはっはーっ!」
こうして、二人の爺さんの新たな冒険が始まった、とさ。
(おわり)
セカンドシーズン