「おい、もう一週間以上続いてるな。牧田、病院に行った方がいいぞ」部長の広野にそう言われ、牧田は自分がまた咳込んでいたことに、ようやく気づいた。「すみません、うるさかったですか?」広野は仕事の手を止め、牧田の席まで歩いて来た。「そんなこと......
某ホテルの大理石のロビー。夜も遅い時間なので客は少なく、閑散としている。その奥まった一角に作られた、ロープを張ったポールに囲まれた数メートル四方のスペースの中に、二人の男が立っていた。手に三十センチぐらいの円盤状の機械を持った作業服の男......
夏の夕暮れ、精三が公園わきの自販機の空き缶入れを覗くと、必ずいくつか入っているはずのアルミ缶が、今日はまったく入っていなかった。(ちくしょう、縄張り荒らしか)精三は、この公園の辺りを縄張りにしている。もちろん、誰かの許可を得たというわけでは......
ほう、あんた、地球旅行は初めてかの。わしはもう三度目じゃ。到着まで、まだ時間がかかるから、わしがいろいろ教えてやろう。そりゃあ、面白いところじゃよ。なにしろあの狭い惑星に、何百万種もの生物がひしめき合っておるんじゃからなあ。宇宙広しといえど......
おはようございます。今日はわりと気分がいいです。ああ、すみませんが、カーテンを少し開けてもらえませんか。ちょっと、外が見たいので。そう、そのぐらいで結構です。はい、食欲はあります。もう、おかゆじゃなくても大丈夫だと思いますよ。あ、いえ、......
そこは小さな町工場だった。工場長兼社長の本多以外、従業員はアルバイト1名のみ。今日はそのアルバイトの川崎も休みなので、本多一人しかいない。ちょうど発注の切れ目で、午前中でほぼ作業が終わってしまった。「さてと。今日はもう閉めちまうか」本多は......
レイ博士は、アークライト発明所にやってきた3人の男に、 あらかじめ依頼を受けていた爆弾を渡す。 その爆弾は一見、ただのガラクタにしか見えないが……。
研究所にやってきた男の依頼により、レイ博士は、未来を知ることができる「タイムライター」を発明する。 男はさっそくタイムライターを使い、未来を知ろうとするが……。
大手出版社に勤める栃川は、知り合いからどうしても会ってやって欲しいと頼まれ、応接室で初老の男と向かい合っていた。男は和服姿だったが、生地は色褪せ、裾は擦り切れている。みすぼらしい外見とは裏腹に、昂然と顔を上げ、値踏みするように栃川を見た......
レイ博士の元へ、1通の手紙が届いた。 手紙の内容は『頼みたいことがあるから、家まで来てほしい』という、ごくありふれたものだが、 その手紙の差出人は、150年以上も昔の、ある有名な画家だった。 そんな奇妙な手紙に招待されて、レイ博士は、画家の住む屋敷へと向かう。
操縦席のイスを倒して仮眠していた中森を、激しい振動と轟音が襲った。瞬時に宇宙船内の照明が赤色灯に切り替わり、非常事態を告げるサイレンが鳴り響く。中森は制服の襟に付いているインカムをタップした。「状況を報告しろ!」 数秒のタイムラグの後......