インビジブル・スーツ

「やったぞ!ようやく完成だ!」
ドクター・ユングミルは3年間、ある研究のために研究室に籠もっていた。
「やっとですか!早く試しましょうよ!」
助手として働いていたビクター・マッシュマンにとっても、嬉しい出来事のようだ。
物質をすり抜けることのできるスーパースーツ、その名も、インビジブル・スーツだ。
「よし、まずはワシが最初に着てみるぞ!このスーツを着た人間、第一号になるのじゃ!」
ドクターはスーツの入っている箱を開けた。
「ドクター、最初にお伺いしておきますが、危険は無いのですね?」
ビクターは少し恐れている。
というのも、実験に失敗はつき物で、これまでも何度か失敗して、中には命を落としそうになった失敗もある。
実験には細心の注意を払わなければならないのだ。まして、それが世界初のものなら、今まで以上に気をつけねばならないのである。
「大丈夫じゃ。よいか、このスーツを作るのに3年の時を費やした。今更後戻りはできんぞビクター。」
もしこのスーツが実用化の段階までいけば、軍事用に利用され、世界の戦争を変えてしまうだろう。
「見えない軍隊」の完成だ。
どんなに鍵をかけても通り抜け、銃弾や剣はすり抜ける。
まさに最強の兵士だ。
研究所内に緊張が走る。ドクター・ユングミルとビクター・マッシュマンが億万長者になるか、命を落とすか、はたまたそのどれでもない結果となるのか。
世界の運命をその手に乗せて、ドクターはスーツに手を伸ばした・・・・・・・




なんとも驚くべき結果である。
おそらくは誰も予想できなかったであろう結果だ。
「せ、成功じゃ。」
「これを成功と呼べるのでしょうか?」
二人は顔を見合わせている。
確かに実験結果としては成功だ。
スーツは物質をすり抜け、インビジブル・スーツと呼ぶにふさわしい。
しかし、一つだけ誤算があった。
スーツは専用の入れ物に入っているのだが、物質をすり抜けてしまうため、”触れない”のだ。
これでは、物質をすり抜けるスーツは完成したが、実用的ではない。
二人はもう少し緻密な計算が必要だと理解した。
世界を変えるほどのものが、たった3年で出来るわけがなかったのだ。
実験は成功したが、やり直しという結果に終わった。

インビジブル・スーツ

どうも奇術道化師JIGSAWです。
今回もまた、短いながらも、割と上手く書けました。
私は、小説を書くのに、事前にあれこれ準備したり、登場人物を紙に書き出したりはしません。
長編に関しては、頭の中である程度想像しながら書きます。
短編に関しては、その場の思いつきで書いていきます。
なので、本当に文章、構成、ともに酷い時があるのですが、その点は自分でも反省しているので、ご了承ください。
さて、内容ですが、今回の作品はスーツの話です。
柄にも無くコメディチックに書いたので、どうか僅かでも笑ってやってください。
最後になりますが、読んでくれている方、本当にありがとうございます。
それでは、次回作で会いましょう。

インビジブル・スーツ

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  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-11-05

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