ウルトラスーパーデラックスマン横山は、史上最強のヒーローである。 もともと平凡なサラリーマンにすぎなかった横山孝二が、ある日、宇宙意志に選ばれて超絶パワーを与えられたのだ。彼一人の力で、世界征服をたくらむ悪の組織はすべて壊滅し、異次元から…
細野が自動運転でトロトロ走っている車をニ三台追い抜いた途端、けたたましいサイレンの音が後方から鳴り響いた。ミラー越しにぐんぐん近づいて来る白バイが見える。一瞬、このまま逃げてしまおうかという考えが細野の頭をよぎったが…
誰しも、何をやっても上手く行かない時があるものだ。おれが今まさにそうだった。仕事ではしょっちゅうミスをやらかし、そのため自分だけ休みが一日しか取れず、二泊三日の家族旅行の間、一人で留守番することになった。仕事の日は気も紛れるが、一人ぼっち…
大方の予想に反し、宇宙人とのファーストコンタクトは極めて平和裏に実現した。 ニュートリノ通信の技術が確立されるや否や、すでに無数の通信が行われているのが発見されたのである。マルコーニが無線の実験をした時に同じような現象が起きなかったのは…
新人ベルボーイの明石は、その男を一目見るなりヤバイ系のゲストだと思った。ごつい体にストライプ柄のスーツ。金色に光る腕時計。極端に短く刈り込んだ髪に、長く伸ばしたモミアゲ。脇に挟んだセカンドバックとは別に、怪しげな紙袋を持っている…
ここは、とある独裁国家の秘密軍事研究所。長年の研究が完成したとの報告を受け、この国の最高権力者である将軍がやって来た。将軍は、厳重なセキュリティに守られた特別研究室に入り、自分が呼ぶまで誰も近づかないよう命じた。護衛たちが完全に…
(作者註:虫が苦手な方は読まないでください) 相川が娘の智子の挙動不審に気付いたのは、夏休みが始まって間もない土曜日だった。今年中学に入った智子は、夏休みになっても部屋でゲームばかりしていたのだが、その日は庭に出て何かコソコソやっていた…
アキラはいつものように、仕事から帰ると真っ先にライフナビのスイッチをオンにした。すぐにナビのモニターに若い女性のキャラが現れた。アキラの好みなのか、ちょっと古風な顔立ちである。《お帰りなさい、アキラ》「ただいま、ユリカ…
その日、早川がいつも通勤する時間より一本早い電車に乗ると、車内で同僚の沢村を見かけた。音楽でも聴いているのか、開放型のヘッドフォンをつけてボンヤリ車外の景色を眺めている。「よう、何聞いてるんだ?」 早川が声をかけると…
これは自然に対する暴挙というものだ。眼前に広がる光景に圧倒されながらも、男はそう思った。久しぶりに戻った故郷の村は、まるで様子が一変していたのである。男が幼い日々を過ごした森は切り払われ、柔らかな曲線は幾何学的な直線にとって代わられ…