某テレビ局のスタジオ。 終末論をめぐってパネラーが二手に分かれ、今まさに議論は白熱していた。 物理学が専門の大木という大学教授がやや興奮気味にしゃべっている。「あんたたちは何かというと人類の終末だの、この世の終わりなどと世間の不安を煽るが…
トシオが生まれるとすぐ、宮参り用品のDM(ダイレクトメール)が両親の元へ届いた。 翌年には端午の節句の武者人形のDMが来た。 二歳になると、英才教育のDMが来るようになった。 三歳のときには七五三用の着物のDMが舞い込んだ…
久しぶりの休日に山道をドライブしていた長谷川は、そろそろ昼時なのに食事ができる場所が見つからず焦っていた。焦って知らない道に入り込み、余計に人里離れた場所に迷い込んでしまったようだ。 ようやく、レストランらしき建物を見つけ…
ぼくがおかしなユメから目をさますと、へやのようすがかわっていました。 なんだか古くさくなっている上に、ぼくのべんきょう机がなくなっていて、かわりにもう一台ベッドがあります。それに、なぜだか体がおもたく、コシのところがズキンズキンと…
最初に、裁判のニュースからです。 一方的に惑星の資格を奪われたのは、天体としての主権をないがしろにするものだとして、地位保全の訴えを起こしていた、いわゆる『冥王星裁判』ですが、星界最高裁判所はこの訴えを棄却し、半世紀に及ぶ裁判は…
「あなた、これ何よ」 家を出てすぐに財布を忘れたことに気付いた橋本が玄関に戻ると、待ちかまえていたらしい妻にそう聞かれた。何のことかと聞き返す前に、橋本の財布をその場で開き、背表紙の裏側から小さく折りたたんだ紙幣を出して見せた。「あっれえ…
大富豪として知られた倉持大造氏には妻も子もなかったため、質素な葬儀の後、遺産を相続する権利のある親戚一同が豪邸の大広間に集められた。 顧問弁護士によって遺言状が読み上げられ、各自が受け取る遺産が知らされたが、思ったほどの金額ではないことに…
「ついこの間まで、寒い寒いと思ってたのに、急に暑くなってきたな」「そうですね。特に課長なんか、直火焼きですもんね」「そうそう。直射日光が地肌に直接って、おいっ!」「すいませーん」「まったく、今時の若い者は…
武田は急な出張で地方に一泊することになった。とりあえず眠れさえすればいいので、ネットでなるべく安いホテルを検索すると、『全自動ホテル』というワードが目に留まった。低料金なのに、高級リゾートホテル並の気分を味わえるという…
(作者註:50作目を記念して、いつもより長めのお話です。ご用とお急ぎのないときにお読みください) いつの時代も外交官は危険と隣り合わせの職業である。まして、この宇宙大航海時代にあっては尚更だ。交渉する相手は生命形態からして我々と異なっており、爬虫類型、昆虫型、植物型、果ては何型に分類したらいいのかわからない場合すらある。 いや、どんな…