それは光の矢のように見えた。 腹の底から響くような轟音。 とっさに腕で顔を庇うが脇ではじけ飛んだ木材の破片が体中を切り刻む。 「ぐぅああああぁ!」 衝撃で数メートルは飛ばされただろうか。それでもすぐにその場から転がるように飛びのく。 瞬間、白い棒状のものが今までいた場所に突き刺さる。再び襲い掛かってくる木材の破片を京介は地面に伏せることで何とかやりすごした。
『石田の天狗』といっても民話ではありません。山深い石田村に天狗のような力持ちの子がいたのです。 SF的なのは、その子の特別な体質だけで、後はごく普通の人々です。 不幸な事情でその子は両親を失い、村人全体で養っている、『村の子』です。戸籍もないので学校に行くこともありません。 でも隣接する銀海町に転校生としてやってきた弘と友達になります。そして弘の家族ととても親しくなるのですが実はこの子、男の子の振りをしていますが、女の子だったのです。それには深いわけがあるのです。そしてそれと同じ理由で、主人公のこの女の子は村の人たちや弘たちと別れて、別人の名前をもらって見知らぬ土地に行くことになったのです。主人公12才のときの物語で、彼女の生い立ちや事情がだいたい理解して頂けると思います。 この章だけでも少し長い中篇くらいの分量ですが、ゆったりしたときに読んでいただければ嬉しいです。
「ねえ、真也。小学校の頃のワンタン事件って覚える?」 「んー? あぁー、あの事件か」 居酒屋の密集した線路下の裏路地で、俺は小学校の時から同級生だった薫と会っていた。
「うー、寒いなぁ」 私は自宅に入ると家の中心に鎮座している七輪に火を入れた。 この家にエアコンなどという高価な暖房器具は無い。あるのはこの年季の入った七輪だけだ。
私のクラスに転校生がやってきた。 「ハーイ、ワタスィのナマエー、ミゲルとイイマスー」 日本語だ。こいつ日本語を喋るぞ。 「ワタスィー、ナンバンからキマシター」
私は丘の上に住んでいる。 左右は高い山、後ろは強く風が吹き付ける切り立った崖。 こんな所に住もうなどと、昔の私だったら思わなかっただろう。 しかし、今の私はここでの暮らしを気に入っている。 なぜなら私にはかけがえのない友人たちができたからだ。
「レディイス、エァンド、ジェントルメン!」 半径100メートル程度の暗闇のドームに、ノリの良さそうな若い男の声が響く。 「今夜もやってきました! ザ・バトルショー! さて、まずは本日の挑戦者の登場だ!」 直後、ドラムロールが鳴り響く。そして一糸乱れず音が止まる。 「棕櫚の箒にまたがる現代の魔女っ子、ハニィィーちゃん!」
私の目の前を魚が泳いでいた。 落ち着け。そんなことがあるわけがない。 目を閉じて深呼吸をする。 そしてそっと目を開けてみる。 いた。幻ではない。 どうしてこうなったんだ。 私は数分前のことを思い出してみる。
紅茶の中に魚が泳いでいた。 落ち着け。そんなことがあるわけがない。 もう一度ティーカップの中を覗き込んでみる。 いた。幻ではない。 どうしてこうなったんだ。 私は数分前のことを思い出してみる。
熱い陽射しが降りしきる中、青年は滴ってくる汗を手の甲でぬぐった。 彼は一人の少女を探していた。 「虹を生む少女」 彼女は虹を内包する不思議な球を無限に生み出すことが出来る。 そう聞いてきたからこそ青年は汗を滝のように流すこともいとわず真夏の入江を歩いていたのだった。
そこは一面真っ黒の世界だった。 都内のマンションの一室。3畳ほどの広さの部屋に装飾品の類はなかった。 あるのは3センチ四方のジグソーパズルのピース。床から壁、天井までもがピースで埋め尽くされている。 ただ一点を除いて。
俺は病院にいた。 女の人が泣き叫ぶ声が聞こえる。 そうか、死んだんだ。と俺は思った。 女の人の声が、俺の耳からいつまでも消えなかった。
月の綺麗な晩、私は児童養護施設の一室に立っていた。 一つだけある窓の下には月の光が降り注いでいる。 そこに少年は座っていた。
俺と悠司は親友だ。 「健治と悠司」と言えば校内でも最強タッグとして名が知られている。 だから街を騒がせている連続殺人犯を、俺達の手で軽く捕まえてやろうなんて思ってしまった。