音

ガシャンッ

体が震えだすんだ

指もちゃんと動かなくなるんだ


口さえ、動かなくなるんだ



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やめてくれ

そんな言葉は、真っ暗闇の中に消えていく

少し柵を越えて、見下ろしてみれば

平和な真顔

まるで、鳩でも飛んでいるようだ


でも、

ここから一つ扉を開けてしまえば


体さえ動かなくなる

指が震えだす

声が出なくなる

音楽プレーヤー片手に

布団にもぐり

現実じゃない なんてくだらない妄想



「美樹、引っ越すよ」

割れた食器を片付けながら

私に優しく声をかける母は

道端で鳴いている、子犬



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どうしたの?

“どうもしていないのは当たり前”

そんなコト決めた人、一度握手してほしいわ


同じ台詞を繰り返す

同じ年に生まれて、

私よりも遥かに要領の悪い

“人間様”に

なんでもないような顔して

1日経っても震える指を

ひざの上に隠す


家庭科の時間

たまにあるような、

3分後にはすぐ忘れてしまうような


『日常』


笑うフリ

すぐ忘れるフリ

手など震えていないもの

全部嘘よ

そんな顔して

心に“震え”を押し込めるの



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「楽しかった?」

満面の笑みで楽しそうな子供の役

お母さんも嬉そうじゃない

ふふっ

私は、誰にも負けないの



「美樹? このお茶碗、割れちゃった?」

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-04-06

Copyrighted
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