神樹友紀子は特殊な女の子だった。 長い黒髪に強い意志を秘めた瞳が印象的な娘――。それが森本健司が彼女に抱いた第一印象だった。 「神樹。お前――、一体どうしてここに?」 彼女の周りには複数の男たちが気を失って倒れている。 それは、今しがた森本とそのクラスメイトの酒野修一を襲っていたチンピラだ。 校外学習中に森本と酒野は、ちょっとしたトラブルに巻き込まれた。そのピンチに神樹がタイミング良く駆け付けたというわけだ。 「教官の命令だ。お前たちを教官の元へ連れて行く」 「命令って――うっ……、わ、わかったから落ち着け。な?」 その目には有無を言わさぬものがあった。 森本と酒野は、大人しく連行されるしかなかった。
「酒野よー! どうしてこんなことになっちまったんだ!」 流れていく街並みを横目に、整備科志望で同じ班の森本健司が涙目で叫ぶ。 「それを俺に聞くのか! 気まぐれでお前があんな廃車を直したからだろ!」 森本の隣の助手席に座る修一が、右へ左へ体を振り回されながらも怒鳴り返す。 二人は今、宮都の旧市街をオンボロの旧型リニア自動車で疾走していた。
「えー、本日から転入してきた酒野修一君だ。みんな仲良くするように」 HRで担任からあっさりした紹介をされる。長髪を後ろで束ね、つり目に眼鏡の、真面目で優しそうな先生に見えた。 「先生先生ー、今度の転入生はズバリ先生のタイプですぐぼぁあっ!」 ……前言撤回。どうやらかなりおっかない先生のようだ。
「……3DGPS作動。感度良好。目標情報……修正。捕獲手順更新終了。最短距離……算出完了」 彼女は先ほどから独り言のように何事か呟いている。 「友紀子、聞いてる? 今日こそは絶対に一人で飛び出さないでよ!」 彼女の視界を覆う大きめのゴーグルに、彼女のクラスメイトからの通信が入る。 しかし、彼女の意識はゴーグルの映し出す三次元の映像に奪われていて、応答する気配はなかった。 「ちょっと! 友紀子! あぁ、もうどうなっても知らないわよ!」 一方的に通信が切断されると、辺りが急に静かになる。 空の彼方を泳ぐ月海鯨が発した、重低音の鳴き声が遠く響いている。 「演習ナンバー三一○六……カウント三、二、一、開始」 ゴーグルから機械的な音声が発せられ、その直後に彼女は緑月の空に向かい跳んでいた。
百年以上昔のある日突然、月は緑の月になった。 大気ができ雨が降り、海ができるまで一年もかからなかったという。 その後の調査により人が住めることがわかると、自分たちの星の資源を食い潰していた地球人たちはこぞって月へと移住した。 私の家族もそんな移住民の子孫だ。 祖先に宇宙飛行士がいたぐらいだから、地球にはそれほど未練がなかったのかもしれない。 そうして私は今、緑月に住んでいる。 この大地がどうやって生まれたのか。 それは百年以上経った今でもまだわかっていない。 しかし、それは私には全く関係のない話だった。緑月で幸せな生活を送っていた私には。 そう、少なくとも昨日までの私には――。
大手生命保険会社に勤める成実桐子は、交通事故により発症したこころの病を、三十年もの間ずっと抱えていた。 桐子は二卵性双生児として産まれたのだが、ある事情で姉の池川和子とは別々に育てられ、中学を卒業するまでは姉の存在すら知らなかった。しかし、ひょんなことから二人は出会い、桐子の家で同居を始める。その直後に、桐子は轢き逃げされて重傷を負ったのだ。 桐子の怨みを晴らそうと、和子は現場に残された「アロワナ」のキーホルダーを手がかりに、「リョージ」という男を捜し始める。桐子が交通事故に遭遇したとき、桐子と一緒にいた恋人の雄三が、逃走する加害者のことを「リョージ」と呼んでいたからだ。 しかし、その「アロワナ」だけで加害者を見つけることなど到底無理な話だった。ところが、加害者が残した「アロワナ」には、三文字のアルファベットが彫られていた・・・。
まずは、お読みいただきありがとうございます。 この間、少し長めの短編に取り組んでいたのですが、書いたものがくすんで見えて、しばらく休んでいました。 久しぶりにジョージ・オーウェルの『1984年』を読みました。読後しばらく辛くて、気持ちを吹っ切るのに、数日車の中で『千と千尋の神隠し』の主題歌を繰り返し聞いていました。昨日は、『ステキな金縛り』を観てきました。ステキなエンタメでした。 おかげさまで、駄洒落でOLの情事を書きたかったわけではありませんが、自分としては、少し前向きなものが書けたような気がします。(2400字程度)
2ちゃんねるのニュース速報VIP板に投下したTVアニメ『とある魔術の禁書目録』のSSです(台本形式)。 24時間以内に10人の異性にフラれないと死ぬ呪いにかかった上条当麻。呪い解除のため、さっそく御坂美琴に告白するが・・・。