恋の音~孤独~

感傷

 神様は残酷だ。

 私のことが嫌いで嫌いで仕方がないんだ。

 だから私をこんなところに放り投げたんだ。

 生きてて楽しかったことなんてあったかな?

 生きてて嬉しかったことなんてあったかな?

 生きててよかったなんて思ったこと一度もないのに私はなんで生きてるの?

 いつも一人ぼっち。

 誰からも必要とされていないのになんで生きるの?

 死にたい・・・でもやっぱり死ねない。

 あぁ・・・やっぱり神様は残酷だ。

 私をまだ苦しめようとする。まだ孤独を続けさせようとする。

 でも、残念。

 私はもう諦めた。

 自分は幸せになれない。

 ならばそれなりに惨めに生きてやろうじゃないか。

 惨めに惨めに・・・

 そして最後には―

同じ一日

 今日は帰りが少し遅くなった。もう0時を回っている。

 白い息を吐きながら玄関の鍵を開けて中に入る。

 家の中は外よりは寒くないけど少し肌寒い。

 歯の根をガチガチを鳴らしながら暖房のスイッチを入れながらソファーに寝っ転がる。

 その時机の上に何かが置いてあるのに気づいた。

 「・・・しばらく帰れません・・・か・・・。」

 それは母の字であり、その横にはクレジットカードが置いてあった。

 いつ帰ってきたんだろうか・・・。

 私は手紙をぐちゃっと丸めてゴミ箱に投げ捨てた。

 いつもこうだ。

 物心ついたころから私はずっと一人だった。

 両親は共働きでいっつもいないし、兄弟もいない。

 まぁ、幼い頃はまだ夜遅くはあったが必ず家には帰ってきていた。

 しかし今は仕事が忙しいとかで滅多に家に帰ってこない。

 まぁそのおかげでお金は腐る程ある。

 私は園田恋音(ソノダレノン)。

 中学3年生の女子である。

 「ふわぁ・・・。」

 流石に眠たくなってきた。

 私はもう部屋まで戻る気力もなくそのままソファーで眠りについた。



 朝、カーテンの隙間から差し込む光によって目が覚めた。

 今日は学校がある。

 朝ごはんなんか作る時間もなく冷蔵庫から牛乳を取り出してコップになみなみと注いだ。

 やっぱり朝一番は牛乳に限る。

 コップを持ち上げて一気に喉に流し込んだ。

 ふと目に入った時計を見てみればヤバイ時間になっていた。

 急いで用意をしなくては・・・そう思っていたら案の定チャイムが鳴り響いた。

 私は急いで用意をして玄関を飛び出した。

 「待った?」

 「えぇ待ちましたとも。今日は5分遅刻だよ。」

 玄関の前には私の家の向かいに住んでいる幼馴染の菊池梨花(キクチリカ)が白いため息を吐きながら待っていた。

 一つ年下で私の家の事情を知る人物である。

 「寒いねぇ・・・。もう12月かぁ。」

 梨花の言葉に私はふと空を見上げた。

 晴れてはいないけどあまり曇ってもいない曖昧な天候。

 私と梨花は(てか梨花が一方的に)他愛もない話をしながら早歩きで学校へ向かった。

 教室では賑やかな声とストーブのぬくもりで満ちていた。

 「恋音おはよ。」

 いきなり背中を叩かれて思わずむせてしまった。

 「ご、ごめん!そんなに強く叩いたつもりはなかったんだけど・・・。」

 申し訳なさそうにしているのはクラスメイトのマナミ。

 マナミはクラスの中心的人物で面倒みもいいのでみんなから好かれている。

 私みたいな地味な人間にも話をかけてくれるんだから相当いい人である。

 「ちょっと驚いただけ。なんか今日テンション高くない?なにかあった?」

 机に荷物をおろしながら何気なく聞いてみた。

 でもそれが間違いだったことにすぐ気づいた。

 マナミは待ってましたと言わんばかりに瞳をキラキラ光らせていた。

 こうなるとマナミの満足するまで会話に付き合わなければならないのだ。

 「分かるー!?あんねー実は私ね・・・彼氏できたの!!」

 ブイサインを作りながら頬を紅潮させていった。

 「あ、あはは~そーなんだ。」

 正直早く逃げたかった。

 話が長いのだけは勘弁だ。

 そのとき救いの女神が現れた。

 「おはよーマナミに恋音。何かあったのー??」

 ポニーテールがよく似合う女の子はマナミの親友の奈々。

 もちろんクラスメイトである。

 マナミは私からターゲットを変え、奈々に抱きついた。

 「ねー聞いてよぉ!!」

 「・・・あ。まさか私タイミング間違えた?」

 苦笑いしながら奈々は私に視線を送ってくるがもう関わりたくないから逸らした。

 奈々は仕方なくマナミの話に付き合っていた。

 チラチラと視線を送ってくるが気づかないことにしておこう、うん。

 チャイムが鳴り響きそこでようやくマナミの話し声が止んだ。

 ―今日も同じ一日が始まる。

異常な放課後


 下校時間になり私は屋上に向かった。いつもの日課だ。

 梨花は部活があるため今頃体育館でバスケでもしているのだろう。

 誰もいない屋上。春や秋だと屋上にも何人かの人はくるが夏や・・・ましてや真冬なんかに屋上に来る人なんてそんな物好き滅多にいない。

 私はタッチ式の携帯をいじりながらフェンスにもたれかかった。

 サイトでマイページを開いてメッセージをチェックすればそこには新着1件の文字。今日も・・・あった。

 私はすぐに内容を確認して送信をした。

 ふとグラウンドを見たら野球部やサッカー部が寒い中一生懸命練習に励んでいた。

 もう三年生は受験のため引退したからきっと2年生がしきっているんだろう。まぁ私は帰宅部だったから部活とかよくわかんないけど・・・。

 純粋に部活に励んでいる後輩たちを見ていたら知らないうちにフェンスを握っている手に力が入っていた。

 たまに思うことがある。

 私は・・・一体何をしているんだろう・・・って。

 いつの間にこんなに離れてしまったのだろうか。

 無意識にフェンスの向こうに腕を伸ばしていた。

 でも何かがつかめるわけもなく空気さえも掴めない。

 あの純粋で綺麗な世界には到底及ばないことを握り締めた拳が距離が物語っていた。

 それがとてつもなく悔しくて悲しくて・・・瞬間視界が歪んだ。

 水の中を覗いているような感じ。頬に涙が伝った。

 学校にいたらいつも感じる違和感。

 違和感だらけ。違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感違和感・・・

 私は戻れない・・・ていうか、いたことさえないや、あの世界に。

 そう思えば思うほど水はどんどん流れてきた。

 しばらく流してなかったのに・・・なんでなんだろうか。

 そのとき背後から気配を感じ反射的に振り返った。

 「あ・・・。」

 驚いていたのは相手の方だった。

 後ろにいたのはジャージを着た男。(多分後輩)

 「あ、あの・・・泣いて・・・。」

 彼に指摘されて思い出した。そうだ・・・私泣いてたんじゃん。

 恥ずかしさのあまり、慌てて涙を拭って屋上から飛び出した。

 が、それはできなかった。

 「・・・何?」

 掴まれた方の腕を見ながら不機嫌そうな声でそう言った。

 すると彼は慌てたように腕を放してくれた。

 「え?!あ、す、すいませんッ!」

 無意識位に掴んだっぽい表情と反応だった。

 私はカバンを肩にかけ直して屋上を後にした。



 最悪だ。

 見られてしまった・・・泣いている姿を・・・。

 今まで誰にも見せたことがなかったのに見ず知らずの後輩なんかに。

 むしゃくしゃしながら私は最寄りのコインロッカーから大きなカバンを取り出した。

 制服のままうろつくのはヤバイのでトイレで私服に着替えた。

 約束の時間までまだ時間がある。

 家に帰ってもやることなんてないからそこらへんの漫画喫茶で時間を潰すことにした。

 ある程度時間も潰せたので私は中学生なんかが絶対に入ることがないネオン街に入っていった。

 ・・・別に遊びに来たわけじゃない・・・私はラブホテルが密集している方へと足を進めていった。

 「君がルノンちゃんかい?」

 「あ、はい。こんばんは。」

 話しかけてきたのはやせ型でスーツを着たハゲた親父。

 ルノンとは私が“こういうこと”するときに使う名前である。

 流石に本名を使うのは気が引けるし。

 「じゃあ早速行こうか?」

 親父は私の肩を掴むとニヤニヤした表情で私の顔を覗き込んだ。

 ぞわっとはするがそれも仕方がないと親父にバレないように小さくため息を吐いた。

 ホテルの窓口の人が私たちの組み合わせに少々驚いているようだったが決して口には出さない。あっちだって商売だしね。

 とっととチェックインを済ませて私と親父は薄暗く汚い部屋へ消えてった。

 別にお金が目当てではない。貰うけどそれは建前であって本当の目的は全然違う。

 ただ・・・一人の時間を減らしたいだけ。

 誰かの温もりに触れていたいだけ。

 何もかもを忘れたい。一人ってことも、さみしいってことも、虚しいってことも何もかもを。

 リスカも何度か試したけどこれが一番の逃げ道であった。

 きっかけがなんだったかは今になればもう覚えてない。ただあまり抵抗はなかったと思う。

 ・・・忘れられる。

 今日もまた忘れられる。

 大丈夫大丈夫・・・・。

突然の


 「おおルノンちゃん久しぶり~。」

 「お久しぶりです。」

 昔、結構頻繁に連絡をくれていた親父が久々に連絡をくれた。

 親父は慣れた手つきで私の肩をがっしりと掴んだ。力強すぎだし・・・。

 「じゃあ・・・早速だけど行こうか?」

 「はい。」

 親父と一緒にホテルの扉を潜ろうとした瞬間、私の腕が勢い良く後ろに引かれておやじのそばから強制的に離れさせられた。

 私も親父も驚いて後ろを振り返る。

 「お前・・・誰だ?」

 親父の眉間に皺が寄った。私はただただ驚くしかなかった。

 「先輩は・・・帰してもらいます。」

 あのとき屋上にいた彼だった。なんでこんなとこに・・・?

 彼は私の腕を掴んだままホテルから連れ出した。

 少しは親父も抵抗やら追いかけやらしてきたが騒ぎになることを恐れたのであろう。それ以上は追っかけてこなかった。

 「は、離してよ!」

 さっきまではテンパっていたから何も言えなかったが今はだいぶ落ち着いた。

 腕を振り払おうと試みたが彼の手の力には及ばなかった。

 「嫌です。」

 ただそれだけを言うと彼は余計に力を強めた。何度振り払うと力をいれてもそれは無駄な抵抗であり、私は大人しくついて行くしかなかった。

 しばらく歩いて住宅街に抜けた。

 ネオン街と違って当たり前だが静かで暗かった。

 「ねぇどこに連れて行く気?」

 私の問いに彼は答えてくれなかった。

 ただ不機嫌そうな顔だけは伺えた。

 だんだん私も我慢の限界が近づき大声を出す。

 「いい加減にしてよ!!一体あんた何する気なの!?」

 すると彼は足を停めて私のほうへ振り返った。

 「・・・先輩こそあそこで何する気だったんですか?」

 彼がなんであんなにも不機嫌そうなのか意味が分からなかった。

 私は無理やり腕を振り払って彼に背中を向けた。

 「あんたには・・・関係ないじゃない。」

 そう言い捨ててその場を後にしようとしたが彼にまた腕をつかまれた。

 「戻るんですか・・・アイツのとこ。」

 「もう・・・いないに決まってるでしょ!・・・・あんたが邪魔するから・・・。」

 無意識に掴まれていな手で逆の腕を握りしめていた。

 彼はさっきの表情とはうって変わり急にたどたどしだした。

 「あああああのすすすいませんなんか・・・その・・・お、俺―」

 「あーうるさい!私帰るから。」

 腕を振り払って私はその場を後にした。

 もう彼は追ってこなかったし話もかけてこなかった。

 

いらつき

 マジであいつ何なの・・・。

 本当に意味がわからない。

 私はイラつきながら玄関の扉を荒々しく開いた。

 こんなときには冷たい牛乳で気分転換だ。

 「・・・ぷはぁ~!もう一杯!」

 冷たい牛乳が心まで冷やしていくように染みていく。

 私はそれでも物足りなく牛乳パックごと口をつけて一気飲みをした。

 空になったパックをゴミ箱に投げ捨ててソファーに倒れこむ。

 暖房もいれていない。さっき冷たい牛乳を飲んだのもあって一気に寒くなってきた。

 バレた。

 誰にもバレていなかったのにあんなやつにバレてしまた。

 もしアイツが援助交際のこと言いふらしたりチクったりしたら私はどうなるのだろうか?

 もともと一人であったし離れていく人はいないだろうけど・・・。

 仮にも私を産んでくれた両親はどう思うだろうか?心配とかしてくれるのだろうか?

 それとも関心ないのかな?

 私はいつの間にか眠ってしまっていた。

 驚いた。

 こんなにもあっさりと落ちるように眠れたのはいつぶりだろうか。

脅迫


 今日は部活の朝練で梨花はいない。一人での登校だ。

 「おはよう恋音~!!」

 後ろから聞き覚えのある声がして振り返った。

 「おはよ・・・あれ、えっと?」

 振り返った先にはマナミと・・・隣のクラスの山内くんがいた。

 なぜこの二人が一緒にいるんだろう?

 「おはよう園田。・・・ってもしかして俺らのこと知らねぇ?」

 山内くんは頭をかしげながらマナミのほうを見た。

 マナミは少し顔を赤めて山内くんの腕にしがみついた。

 「この間言ったじゃん。私と山内くん付き合ってるの。ねー?」

 同意を求めるように山内くんに顔を近づけてる。

 あぁ、そういうことか。確かそんなことも言っていたような気もする。

 「そうだんだー。おめでと。」

 「えへへー。山内くんちょっかいとかしたら恋音でも許さないからねー。」

 幸せそうに笑いながら山内くんとマナミは歩いて行った。

 山内くんとは1年2年と同じクラスだったからなんとなくは知っていた。

 だからなんとなくは知っているけど・・・まさか“あの”山内くんと結ばれるなんて想像もしてなかった。・・・マナミあぁいうタイプ苦手じゃなかったっけ・・・。

 「園田。」

 掃除時間。

 ぼーっと窓ふきをしていた私にクラスの男子が近寄っていた。

 そんなに話したこともないし、何のことだろうか。

 「何?」

 「いや・・・大声では言うなって言われたんだけど・・・。」

 耳を貸せと言われ、少し不信感を抱くが素直に耳を向ける。

 「山内が放課後屋上に誰にも言わずに一人で来いってさ。」

 「は?・・・それ本当に私?マナミじゃなくて?」

 「いや俺もおかしいなとは思ったんだけど・・・まぁ俺は伝えたから!」

 そう言うと男子はとっとと教室から出ていった。まだ掃除時間なのに・・・。

 山内くんからの呼び出し・・・。

 私なんかしたっけな?もしかしてマナミのことについての話だろうか・・・。

 それとも・・・ううん、まさか。

 きっとマナミのことの相談に違いない。だってあの子の扱いちょっと難しいから。

 嫌な予感を頭から強制的に追い出すように頭を振る。

 掃除時間が終わり、私は屋上に向かった。

 扉を開けばフェンスにもたれかかってる山内くんの姿があった。

 「・・・何の用?」

 「ここさみぃなぁ~。」

 白い息を吐きながら両手を擦り合わせている。

 話をはぐらかされたような気がして眉間に皺が寄る。

 「屋上だもの。仕方がないんじゃない?・・・それで用って?」

 「そっか~。いや~でもほかに場所が思い浮かばなくてよぉ。」

 こいつ・・・。本気でもう帰ってやろうか。

 そう思った瞬間、いきなり自分が影に隠れたような気がした。

 それは山内くんの影であり、いつの間にか目の前まで近寄っていたのだ。

 「?!・・・何なの一体?」

 後ろに一歩、また一歩と下がりながら距離を取ろうとするが、あいつもこっちに近寄ってくるから全く距離がとれない。

 てか、コイツの雰囲気何かおかしい。

 なんて言うべきだろうか・・・。

 「いやさ・・・俺、お前にお願いがあるんだよ。」

 背中がフェンスについた。もう後ろには下がれない。

 距離はほとんど0に近かった。

 「私・・・もう帰るから!」

 そう言って扉のほうに目線を逸らした瞬間、山内くんの口からとんでもなく、そしてどこか聞き覚えのあるセリフが聞こえた。

 「ヤらせてよ。」

 体中の神経が一瞬にして固まる。そしてその時コイツの噂が頭に駆け巡った。


 「Dぐみの山内ってヤれそうな女を片っ端から食ってるらしいよ。」


 誰かが言ってたその噂。

 そのときは冗談にしか聞こえなかったからスルーしていたし、中3なら仕方がないんじゃない?という少しずれた考えをしていたから何も感じてなかった。

 でも今朝、マナミと歩いているのを見て思い出したんだ。

 あの噂は本当だったんだ。

 「意味・・・わかんないん―」

 「俺、知ってるんだぜ?」

 「はぁ?」

 気持ち悪いほどニヤついた表情で私の顔を覗き込んできた。

 寒いのに汗を書いているように感じられた。

 「この間、興味本位でここら辺では知らない人はいないラブホ街に行ったんだ。ぶらぶら歩いていたらそこにはどこか見覚えがある人物が私服で歩いてたんだ。」

 あぁ・・・もう何だか全てが汲み取れた。

 そこまで言われて気づかないやつのほうがおかしいだろう。

 でも山内くんは話を続けた。

 「なんでこんなとこに同級生が?って普通思うじゃん?だから尾行してみたんだ。そしたらなんとなんと!汚い親父と腕をくんでホテルのチェックイン。いやーホントビビったわ。」

 ・・・まさか同級生があんなとこにいるとは・・・。

 先生くらいはいるかもしれないとは思っていたけれど。

 「・・・そう。それであんたは私を呼び出したわけ?」

 「別にいいだろ?きたねぇ親父とヤんのより俺とヤったほうがマシだと思わねぇか?」

 「は!冗談も顔だけにしなさいよ。あんたにはマナミっていう彼女がいるでしょう。彼女とヤりなさいよ、私なんかじゃなくて。」

 偉そうに腕をくんで山内を見下ろす。腰をかがめて私より目線がしただった山内はむすっとした表情になり私の両腕を掴んでフェンスに押し付けた。

 「あいつはダメ。全くヤらしてくんねぇ。無理やりヤっても不利になんの俺だろ?」

 「へぇ~。案外あんた小心者なのね。」

 フェンスに押し付けられても負けじと馬鹿にしたような目で山内くんを見上げる。

 山内くんは眉間に皺を寄せ腕に力をぎゅうっと込めた。痛いって・・・。

 「てめぇ調子に乗んなよ?俺が言ってしまえば学校に来れなくなるんだぜ?高校進学にも大きく関わるんだぜ?」

 これが俗に言う脅し・・・いや脅迫というものか。

 実際脅迫なんて何度もあっている。援助交際してればそんなこともう慣れっこだ。

 だから全く怖くなかった。・・・だけどナンデダロウ。

 この人の瞳からは私と同じようなものを感じる。

 「すればイイじゃない。私には関係ないし。」

 「お、お前正気か?」

 

恋の音~孤独~

恋の音~孤独~

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-05

Copyrighted
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Copyrighted
  1. 感傷
  2. 同じ一日
  3. 異常な放課後
  4. 突然の
  5. いらつき
  6. 脅迫