白い面は否定のためにつかう
やりたいときやってるんで結構掲載まちまちです。やりたいようにやってすいません。
「なんなんだよ・・・これ」
吸えば気分がよくなるくらいきれいな空の中、鳥たちが気持ちよさそうに飛んでいる。
長い通路に広がる赤い液体は、三島和音の足元から胸にかけて黒い制服の上からでもはっきりわかるくらいに飛び散っていた。
人と確認できるギリギリのレベルでココにある一人の同級生が倒れていた。
それはまるで爆発のソレと同じだった。上半身がまるで吹っ飛んだかのように自分を中心にして前方に180度、前に3メートルぐらいにかけて血が飛び散っていた。
驚愕した。だがそこまで大きいものでもない。目の前の出来事とここまでの出来事をしっかり認識できている和音がいた。
そう、この三島和音は同級生からイジメを受けていた。
一時間ほど前、授業が始まる突然、机に水がかけられていて、そしてそのうえから自分のジャージがかぶさっていた。
くやしい、でもいつも平然とした顔でやり過ごす。
今までにどれだけどうイジメをしてきた相手にどうやり返すかというシュミレーションを頭の中でやったか。だけど、もういじめは慣れっこだ、と和音はもはや自分に降りかかるイジメを諦めていた。
そんな視線をあびならそのかぶさっていたジャージで机を拭いて、濡れたジャージをカバンに入れた。放課後になり、いつものように廊下の恥を歩きながら、気配を薄くして歩く。
そのあとだった。肩に手をかけられ、振り返ればその景色があった。
感触はない、記憶もない、痕跡もない。でも、これは間違いなく言える。
殺したのはこの僕だ。
「きゃぁあああ!!」
後ろから悲鳴が聞こえた。マズいとは分かっている。血の付いた制服と目の前に飛び散った肉片があるとなれば間違いなく疑われるのは和音なのは明白だった。だが和音はうろたえた。どうすればいい、と慌てて後ろを振り向く。と振り向くとそこには上半身が吹き飛んだ死体が転がっていた。また殺してしまった。慌てて外へ飛び出し家へと駆けだす。
今日二人も殺してしまったのだ。
和音は自分の部屋のベットの中にうずくまり学校での出来事を一生分の頭を使って考える。いまは誰かにはあってはいけないと思った。それは出会った人がいつの間にか死んでしまうんではないかということだった。耳を塞ぎ目をつむった。あらゆる事柄が怖くなってしまっていた。
「ピンポ~ン」
背筋の毛が一斉に立ち上がる。たしか鬼ごっこで近くに鬼が来た感じはこんな感じだったろうか。噛み千切る勢いで自分の親指を噛みながら他へ意識がいかないようにしていた。
「バタン」
帰ったのだろうか。自分の噛んだ指から出る血がベッドに滲んでいるのがベッドと布団の間から差し込む光で確認できた。
布団からゆっくりと出る。一つ一つの動作に違和感を覚える。高熱に倒れたとき体が言うことを聞かないような感覚に和音は陥っていた。
「食べ物・・・・・」
和音はおもむろに食べ物を求め冷蔵庫に向かいおにぎりと水の入ったペットボトルを持って自分の部屋に向かい、自分の部屋のベッドに静かに腰を掛けた。
食べ終わったおにぎりを流し込むようにペットボトルの水を飲みつつ、ベッドの上のリモコンを取り、テレビをつけた。
「事件です」
ひざの上においていたおにぎりを落としテレビのリモコンを必死に探す。その事件は何を隠そう和音の目の前で起きた事件だったのだから。
テレビにとびかかるようにし、テレビの電源を切る。その場に立ちすくんでいたら、今頃どうなっていたんだろう。テレビにとびかかった拍子にぶつけた頭をさわりながら地べたに横たわる。
「どうしよう」
冷めた表情をしつつも、必死に冷静を保とうとする。
よく考えてみよう。そもそもあの事件を和音がやったこととは限らない。自分を中心に起きたことでもあのようなことが人間には不可能だ。それどころか、上半身のみを粉々に吹き飛ばすことができるのがはたしてこの地球上に存在するのだろうか。いかなる兵器を用いても、いかなる手段を講じても、なにをしようともできるわけがない。
“人なのだとしたら”
洗面所に向かう。蛇口からでた水を両手ですくい顔にかける。蛇口から出続ける水に打たれて揺れる水面をみながら、和音は事件のことを意識しない努力をした。
部屋に向かい、部屋の戸の中から布団を取り出す。ベッドにある布団の上にさらに布団を重ね、ベッドに腰を落とす。胸の鼓動を押さえつけるように何枚にも重なった重い布団を横たわる全身に覆いかぶせて、そのあたたかな重みを全身で感じながら、ゆっくり目を閉じた。
白い面は否定のためにつかう