星空文庫星空文庫の作品リスト 2200

作品抽出: 全45868作

三題噺「座敷童」「双子」「毬」

「おい、双子」 呼びかけられた長身痩躯の双子が嫌そうな顔をする。 「「なんだ、座敷童」」 ハモった声で座敷童と呼ばれた金髪の少女は、途端にその顔をくしゃくしゃにすると双子を睨みつける。

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三題噺「液晶テレビ」「カレンダー」「りんご」

「――五月二十七日、金曜日。とらうまワイドのお時間です」 液晶テレビに映るキャピキャピしたアナウンサーが萌黄色のスーツで挨拶をしている。 男は手に持っていた林檎をテーブルに置くと、日めくりカレンダーを一枚破り捨てた。

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三題噺「鈴蘭」「胡蝶」「タナトス」

――我にタナトス神の加護あれ 手にしたスズランを花から根まですりつぶすと、僕は牛乳パックを手に取った。 ミキサーに牛乳を注ぎ、すりつぶしたスズランを入れる。 最後にハチミツや砂糖を適度に入れてスイッチをONにする。 「ふふ、君の驚いた顔が早く見たいよ」 部屋の片隅にある胡蝶蘭がそんな僕を静観するように静かに咲いていた。

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三題噺「フィルム」「ラジオ」「居てはならぬもの」

「ら、ら、らー……ラジオ! 次は『お』だよ、クロ!」 赤い鳥居が続く階段をクロは相棒のシロと登っている。 「……重し」 「し、し、し、シャボン玉! 今度は『ま』だよ、クロ!」 先に前を歩いているシロが、クロを振り返りながら言う。久しぶりの遠出が嬉しいのかさっきからずっと飛び跳ねている。そのたびに尻尾についた小さな鈴がちりんと音をたてる。

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三題噺「ジュヴナイル」「ノエル」「アルカディア」

「君には選択するチャンスがある」 その男は紳士ぶった口調で僕に話しかける。丁寧な話し方なのに、なぜか声を聞いていると胸がムカムカしてくる。 「今ある才能だけで世界を越える開拓者となるか」 そんな僕の気も知らず、偽紳士の男は続ける。 「今なき才能を求めて世界を旅する探求者となるか」 男が僕の顔をまじまじと見つめながら問いかける。 「君はどっちを取る?」

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三題噺「サボテン」「美女」「拳銃」

砂漠のど真ん中にある町で、僕ら四人は一人の男の話を聞いていた。 「テキーラはサボテンからできている」 男が語る。

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とある"それ"の記憶

――現在。 「"それ"はとてもとても大切なものだったんだ」 一人の老人がバーのマスターにそんな言葉をこぼしていた。 マスターはいつものようにグラスを磨きながら、老人の言葉へ静かに耳を傾けた。

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三題噺「腕枕」「ヴァンパイア」「小指」

男はただ寂しかっただけなのだ。 自分のそばにいて欲しいという、誰もが一度は持つ願いを恥ずかしくて言うことができなかっただけなのだ。 だから、必然にせよ偶然にせよ現われたその少年に男は救われたのだった。

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三題噺「変態」「家畜」「神様」

「おい、変態」 目つきの鋭い男が、獲物を襲う獣のように闘争心を剥き出しにして、隣の優男に話しかける。 「なんだい、金の亡者?」 校内のほとんどの女子が振り返ると思われる顔を持つ美男子は、そんな闘争心のオーラをものともせず、平然と答えた。

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三題噺「訪問者」「アドレナリン」「四次元リンク」

「やあ、いらっしゃい! 久しぶりだね」 髪を後ろ手に縛った家主は久しぶりの訪問者に声を弾ませる。 「雫姉、久しぶり。少し痩せたんじゃねえの? 研究も良いけど、ちゃんと飯食えよ」 「それはお世辞かい? それとも、本音かい? ……ふむ、人の本音を駄々漏れにする機械。これは面白そうな……」 「ストーップ! それはさすがにマズイから!」 いつもの癖で発明品の構想に取り掛かろうとする叔母――月野雫を、司は慌てて止めた。

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三題噺「50%」「その一瞬」「代償」

「確立は五分五分といったところでしょうか。今の医学ではそれ以上の事は……」 「……そうですか」 落胆する男に医者は声をかける。 「元々お体が弱いようですし、あなたの力で奥さんを支えてあげてください」 「はい……」

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三題噺「逆流する」「まだかなぁ」「堕ちてゆく」

「オラオラ、どうしたよぉ!」 高校のボイラー室に下卑た笑い声が響く。大小様々なパイプが入り組む中、一番奥にある太いパイプに隠れた司には、それが死神の声に聞こえた。 (ちくしょう! なんで俺がこんな目に!!) 自身の今の境遇を嘆きながら、司は音を立てないようにそっと入り口の様子をうかがう。

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三題噺「濡れ髪」「陰影」「硝子細工」

「まったく、君はなんて羨ましい奴なんだ」 隣を歩くイケメン、松風京四郎はそう言うと恨めしげにこちらを見てくる。学校の廊下を歩く今も、すれ違った女子たちが携帯電話で写真を撮る音が聞こえてくる。

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三題噺「ドラムンベース」「カナリア」「架空」

扉についた鐘が鈍い金属音で店内に来客を知らせる。 薄暗い店内にはどこで使われていたのかわからない古文書や巻物、架空の物とされている武器や装飾品がとろこせましと並べられている。アジア系のお香だろうか。天井から吊り下げられたカラフルなペルシャ織物とあいまって不思議な空間を作り出している。そんな店内のくねくねとした細い通路を大きなリュックサックが通る。まるで自分の店のように、商品に一切ぶつかることなく奥まで進むと、大きなリュックを背負った小柄な人物はカウンターで止まった。

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三題噺「アメリカ」「危機一髪」「献杯」

「――アメリカが謎の生命体集団から襲撃を受けたことを皮切りに始まった世界的防衛戦は幕を閉じました」 司会者でもある初老の老人が通訳を脇に立たせながらスピーチをしている。

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三題噺「白木の杭」「一目惚れ」「白いワンピース」

それは光の矢のように見えた。 腹の底から響くような轟音。 とっさに腕で顔を庇うが脇ではじけ飛んだ木材の破片が体中を切り刻む。 「ぐぅああああぁ!」 衝撃で数メートルは飛ばされただろうか。それでもすぐにその場から転がるように飛びのく。 瞬間、白い棒状のものが今までいた場所に突き刺さる。再び襲い掛かってくる木材の破片を京介は地面に伏せることで何とかやりすごした。

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三題噺「波長」「電波」「受信」

――月の裏側 「メッセージ受信しました」 無機質な声が船内に響く。宇宙船を自動制御している機械の声だ。

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怪力少女・近江兼伝・第1部「石田の天狗」

『石田の天狗』といっても民話ではありません。山深い石田村に天狗のような力持ちの子がいたのです。 SF的なのは、その子の特別な体質だけで、後はごく普通の人々です。 不幸な事情でその子は両親を失い、村人全体で養っている、『村の子』です。戸籍もないので学校に行くこともありません。 でも隣接する銀海町に転校生としてやってきた弘と友達になります。そして弘の家族ととても親しくなるのですが実はこの子、男の子の振りをしていますが、女の子だったのです。それには深いわけがあるのです。そしてそれと同じ理由で、主人公のこの女の子は村の人たちや弘たちと別れて、別人の名前をもらって見知らぬ土地に行くことになったのです。主人公12才のときの物語で、彼女の生い立ちや事情がだいたい理解して頂けると思います。 この章だけでも少し長い中篇くらいの分量ですが、ゆったりしたときに読んでいただければ嬉しいです。

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三題噺「ワンタン」「政治家」「同級生」

「ねえ、真也。小学校の頃のワンタン事件って覚える?」 「んー? あぁー、あの事件か」 居酒屋の密集した線路下の裏路地で、俺は小学校の時から同級生だった薫と会っていた。

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三題噺「詰替」「火鉢」「絶壁」

「うー、寒いなぁ」 私は自宅に入ると家の中心に鎮座している七輪に火を入れた。 この家にエアコンなどという高価な暖房器具は無い。あるのはこの年季の入った七輪だけだ。

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