紡ぎ
恐ろしき仁王様
格子に囚われたまま、
打ち捨てられた恐怖を踏み潰す。
汗が滴り落ちる真上を、
モンシロチョウが風に舞う。
その上にある記憶の抜け殻を呪い続けた。
そうして、港町の砂利船が、遠い過去を運び去って行く。
何処にもない。
足下までひび割れたまま、
深き悔悛の和音が、港の方で鳴り響く。
さては、
舞い戻ってきたのか。
赤錆びた巨大な貨物船に積まれたまま。
もはや、構うな。
あの石段を登れば、
焼き付いた黒瓦の上に、
留まる何者かを掴み取ることが叶う。
誰か、僕を呼ぶ声が、
聞き覚えのある。
放っておけ。
あの時間を呼び戻すなど、諦めるがよい。
見よ。
渦巻いている。
その上に、
先ほどの蝶が。
紡ぎ