庭石
オルガノン
西の空に渦巻く暗き雲、
生暖かき風に流され、
僕の庭に雨を落とす。
白き砂の紋様に影を落とし、
波を砕く激しきさまを、
背を丸めたまま、じっと見ていた。
風が擦する裏山の笹の葉の音が、
僕の耳元で鳴っている。
この季節、
いにしえの覚えを語る僧達が、
見知らぬ山間から降り始める。
何者を供養するためにか。
逃げ出した盗賊を、
いま再び、呼び出すならば、
僕の記憶を盗み出すためにか。
僕の庭に雨を降らせ、
若き立木の枝を震わせ、
池に流れ落ちる滝を溢れさせる。
もうすぐ、
庭の木戸を叩き、
白き砂を踏みにじり、
縁側に座り込んだままの
僕の視界を遮る大きな影が
空を覆う。
見よ。
彼は、僕の未来を
告げに来たのだ。
庭石に掘り刻まれ、
苔生した懐かしい筆跡の主を
僕に教えるために。
庭石