天使狩人 14
前回と同じ
デビルハントは、それぞれの本部を主軸としてある程度の範囲まで広がっている。そしてその範囲外は、他のデビルハントのエリアだ。
天使世界の有り様は、昔の国々があった世界とは少し違う。島国が無いのだ。そして、かつて7:3で海の比率は高かった者の今や5:5の半分しかない。陸地が地震等の奮発により盛り上がったのだ。しかし、人々は異空間にいる。
なぜならーー、天使がいるからだ。天使は、人を食べ殺す……、そんな天使から人々を守るのが天使狩人だ。
黒い甲冑はバスターズの制服だ。撫で肩だろうともわからないように盛り上がった肩当て、そこから関節まですっぽり覆った金属……、下半身は上半身に比べると非常にスマートであるが、やはり金属で固められている。
これらは、見た目重そうだが実は軽いのだ。まぁ、天使狩人に成るためにある洗礼の時に身体能力が上がっているのもあるが……。
そして、バスターズの最大の特徴……、全員が《聖騎士》なのだ。短剣から、両手剣、クレイモアまで様々な刀剣がある。中には、ウイップ……鞭までもあるぐらいだ。
黒く鋭く光る大理石の廊下を一人、男が歩いていた。彼の名前はダーク。黒光りする日本刀を使う天使狩人だ。
今ダークは、バスターズの長であるカイキに会いに行こうとしていた。カイキは、三大騎士の一人でもある。つまり、バスターズ内において右に出るものはいないというほどの強豪だ。もちろん《聖騎士》である。
ーー話しずれェんだよな……。
愚痴をこぼしながら大理石の上を歩いた。これが、無駄に長いのだ。
バスターズの本部の構造は、獅子に挟まれた鉄格子の門を潜り抜けるとだだっ広い広場がある。中心に噴水があり、それをぐるりと囲むようにアスファルトが敷き詰められている。門から、正反対のところにやっと内部への入口があるのだ。
入口は、ロビーと直結していて入ると同時にその大きさに圧倒されてしまう。ロビーは二階に分けてあり、一階は指令室が奥にある。右には、武器調節できるところがあり、左は買い物店だ。
二階からは、各自の部屋が用意されてある。一階から左右両方から上ることができ、三つの通路に分かれている。
正面が、バスターズの長の部屋。
左右は、各天使狩人の部屋である。
ちなみにこの構造は、どの本部でも使用されている。なお、小型デビルハントは、本部のミニチュアバージョンである。
「カイキさん、失礼します」
長であるカイキの部屋をノックしながら言った。
「おう、入れ」
図太い声をしているのにも関わらず陽気なトーンだ。そしてその主の姿は、ダークと同じ黒い甲冑……、銀灰色の髪をしていて、オールバックだ。おでこには、髪が少し掛かっている。鋭い目付きだが決して威圧感は感じられず、細身の顔に合っている。鼻は高くもなく、また低くもないようでこれも顔に合っている。
「なんの御用で?」
毎回そうだ、ダークは長だけに対して敬語を使う。それがただの敬いなのか、三大騎士を狙うためなのかは本人しかわからない。
「あ~、なんだ。その、あれだなぁ……、ダークはな、ここに所属してからまだ日が浅いンだよな」
「それが、どうかしましたか?」
ギッと睨みながら聞いた。
「熟練者達からな、生意気って苦情がきてるんだよ、だから、ちょっと……そのな」
「天使との戦いに必要なものは過ごしてきた時間ではないです。必要なのは、天使さえも圧倒できる力です。そんなことを言う奴等は力が劣っているのでしょう」
「た、確かにそうだが……、ほらやっぱり先輩、後輩みたいな?」
「そんなの生まれた年の違いです」
カイキは黙りこんだ。
バタンッと、ドアを蹴り開ける音……。
「てめっ、さっきから聞いてれば、ぬけぬけとそんなことを!」
先輩だった。無論、ダークは先輩等とは思ってすらいない。
「ハァ……」
カイキの長い溜め息が響き渡った。
「俺と一対一しろっ!」
天使狩人 14
続く