日奈子の父、誠司との死別がきっかけで見つかった、緑との手紙のやり取りで展開していく本作品。今まで日奈子が知らなかった誠司の青春や物語が明らかになっていき、手紙を通して誠司の新たな一面を見つめる、心温まるヒューマンドラマです。 新しい山岳ロマンスの世界に誘います。
「何年かに一度、波が虹色に見えることがあるんです──」 奇妙な言い伝えを信じて浜辺に通う紗雪と、人の記憶を蒐集していたとされる高祖父を持つ透子。 海は優しいようで冷たい。美しいようで恐ろしい。 ざざと波が鳴るので、私ばかりが淋しい。
これが、医療現場のリアルーーーー。そこには、本来思い描かれるような崇高さも、高尚さもない。ただ歴然と横たわる『現実』。 綺麗事だけでは、いずれ破綻することを誰もが実感している、現場の空気。現役医師が伝えたい、医療の現実がここに。国民全員に読んでもらいたい、衝撃の医療物語である。
失業した妻子持ちの男が、日々の生活に困窮してたどり着いた先は国が自殺を公に認める自殺幇助ボックス。この完全に密閉されたボックス内で、男は睡眠薬と一酸化炭素による自殺で苦しまずに死ねるはずだったが、システムの誤作動で生きたまま狭く暗い空間に閉じ込められてしまい、生と死の間でもがき苦しむ。
「50になったら必ずだ・・・・・・」 彼女へのクリスマスプレゼントを買いに吉祥寺の街へ出かけた青年には、以前から数取器を使って正確に数えておきたいものがあった。 それは自分以外の他人に感じる悪意で、青年はそのカウント数がもし50に達したら、世直しのために吉祥寺の街で無差別大量殺人を決行する事を自分に課していた。 平穏無事にプレゼントを買って帰宅する事を願いつつ、行く先々で他者に配慮のない人々の迷惑な行動に遭遇して神経をすり減らし、次第に増えていくカウント数と共に膨らんだ被害妄想を一人抱えながら、とうとう限界値の50カウントを迎える。
一家団欒を避けるように、夕飯を終えた茶の間に出て来て晩酌を始めた祖母の、酔っぱらって振り返る過去の不遇と奇妙な出来事が、サルの生態を追ったドキュメンタリー番組に被さって、ぶつぶつと孫に語られる。
普段から理性的な思考で非科学的な現象に納得のいく答えを見いだしていた男が、「格安ならば・・・」と、借りたいわくつきのマンション物件で、自分の理性を越えた圧倒的な負の臨場感に飲み込まれていく。