某ホテルの大理石のロビー。夜も遅い時間なので客は少なく、閑散としている。その奥まった一角に作られた、ロープを張ったポールに囲まれた数メートル四方のスペースの中に、二人の男が立っていた。手に三十センチぐらいの円盤状の機械を持った作業服の男......
高校生になってから、なんとなくパパとは距離ができた。だから、いきなりこう言われたときは、正直驚いた。「詩織、おれがゲームを始めるとしたら、何からやったらいい?」「へえ、パパもゲームやるんだ」パパは渋い顔になった。「これも仕事のうちさ......
損はしたくない。これぐらいならいいだろう。ルシファーはそんな人の心を見抜き、うしろめたく思っていた者を処刑した。そして主人公の青年は、自分を負け組に追い遣った世の中の腹癒せにルシファーの処刑に賛成する。腐敗した政治家、堕落した官僚、狡猾なブラック企業など、ルシファーはホームページで一週間毎に処刑対象を指定して投票を募り、賛成が上回ったなら処刑を実行した。
おれはサプリメントのセールスマン。 化学者の相棒とコンビを組んで会社をやっている。 今回の客の注文はいわゆる媚薬であった。
中学一年生の椋は社会の授業中に、自分の家族について、椋にとっては大きな事実に気が付きます。 拗ねる椋、だけど今日は、大事なお客さんが来る日です。 椋はこの事実にきちんと向き合えるのでしょうか。
「ショウちゃん、早くしなさい。ユウキくんが迎えに来たわよ」「はーい」ランドセルをしょってショウが玄関を出ると、同級生のユウキが待っていた。入学してから三年間、ほぼ毎日繰り返された光景だ。「お待たせー。あれ、それなあに」ユウキは、何か丸い......
レインボー出版は、主に地元の名士などの自費出版を手掛けている小さな出版社である。その日、編集長の花沢が持ち込み原稿の下読みをしているところへ、営業の小牧が青い顔で入って来た。「編集長、すみません」「どうした」「ぼくじゃダメって言われました......