ログインしました

自転車のおじさん、河原にログインしました。

その日私は、河原沿いを歩いていた。

田舎に帰り、暇になってきたので犬を連れて河原沿いに来た。

水の天神さんが祭ってある階段を上り、土手へ上がると広々とした山やら空やら、霞雲など見え、眼下の手入れもされていない草まみれの河原が見える。

だからさ、こういうとこお金使わなきゃ一生都市開発なんて夢のまた夢だってば。

そんなことを思いながら、誰もいないゆるゆるした道を犬とお寺さんの裏など通り歩く。
河原沿いの人たちは、ここに家立てて良かったのか悪かったのかわからない。あまり公にしたくない話もあるそうで、昔と違い今日は私一人だ。

鳶がぴんよろーと飛んでいる。カラスが河原を突っつきながら歩いている。

爺さんがお寺さんの横の坂を上ってきて、脳内で「自転車のジーサンがログインしました」とナレーションを入れてみる。
ここはそんな表現がよく似合う。
あんまり来るべきじゃないな。そう思って今日は色々歩いて、散歩は今後祖母に任せることにした。

あんまり、手放しで喜ぶもんじゃないよ。この土地に来たことは。
そう言えばここの人は怒るだろうが、まあ、悲しいお話が沢山あるのは事実なことで。
みんな地元を盛り立てようと必死なのが伝わってくる。夜中に聞こえる太鼓の練習の音などに、それを感じる。

悔しさもあるだろう。
でも私が口挟む件じゃない。

やっぱり私は、県外の人だ。ログアウト、ログアウトしました。

アイフォンでユーチューブを開いたら、全てにおいてグレードアップしたアプリ登場!とあったので早速ダウンロードしたら、レビューがすごかった。

しかし悲しいかな。WiFi環境が悪い。
アプリ頑張れ、と思いながら丸がくりんと青に染まるのを待つ。

ここに来てからずっとそう。アプリ頑張れ。頑張ってくれ。

とりあえずパソコンだけでも繋がって良かった。また書ける。
今持っているアイフォンがばきばきに駄目になるまで使おう。貧乏性な私はそう考えている。

いやいや、付喪神の精神だよ、なんて言ってみたいもんだ。被れてるとたちまち噂が立つだろう。ええかっこはしないことだ。

とりあえず、アプリ頑張れ。
そう思いながら、私は星空文庫にログインした。

ログインしました

なんだか思いついたので。

ログインしました

河原に一人、ログインしました。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-09-27

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