私は執筆していた恋愛小説を中途で掲示板のスレッドに投稿した。朝起きて反応をチェックすると、私とメールでやりとりしたいという書き込みがある。私は喜んでそれに応じた。
「佳代ちゃん、これ、どうしたらいいんだっけ」また始まったと、佳代は心の中で舌打ちした。(いい歳して、甘ったれた声を出すのはやめて。それに、『佳代ちゃん』という呼び方もウンザリ)もちろん、表面上は爽やかな笑顔を微塵も崩さない。「どうされました…
阿久田猛は推理小説が苦手だった。名前に似合わず気の優しい猛は、たとえフィクションであっても、人が殺される話を読むのはイヤだった。だから、本屋の店頭でパラパラとめくったその小説が、どうやら推理ものらしいと気づき、元に戻そうとした。(あれ?)...