兵器少女。

生きる希望をなくした者を砂にしてしまう兵器と一人の青年のお話……。

 私は人間という存在がよくわからない。
 人間は大昔に技術と化学を磨き続けついに永遠の命を手に入れた。
 しかし永遠を手に入れた人間は次々と堕落し、ついに争いが世界のあちこちで起き始めた。
 何があっても死ぬことのない命をあれほど求めた人間たちは自分の体、命を憎み、後悔した。
 そこで作られたのが私だった。
 私は世界に向けて発射され、多くの人間を砂にした。
 どうやら私には生きる希望がないものを砂にしてしまう力があるらしかった。
 人間たちは私が外に送り出されて1年も経たないうちにほとんどが砂と化してしまった。
 私を作った人間達でさえも今は砂となった。
 地球にいたほとんどの人間が砂になってしまったわけだから世界のほとんどは砂漠になり人工物は年月が経つにつれ風化し壊れてしまった。
 えさがなくなった動物達の姿もいつの間にか見なくなった。
 人間はよくわからない。
 どうして欲しいものを手に入れておきながら自らの手で捨ててしまうのだろう?
 ある日、私は一人の青年と出会った。
 その青年だけはどれだけ周りの人間が砂になろうとも生きる希望をなくさなかった。
 そして一人、この地球で未だ砂化していない唯一の存在になった。
 彼は最初の頃、工事に使うためのシャベルを使い土のいたるところを掘った。そしてそこに砂を埋め、また土を掘るという作業をとにかく続けた。
 しかしそのシャベルもさび、使い物にならなくなった今彼は手で土を掘っては砂を埋めた。
 どうやらこの青年は全ての砂を土に埋めるつもりらしくその作業は何十年、何百年とかかった。
 時々私は青年に尋ねてみた『どうしてそんなことをするの?』と。
 しかし彼に私の声や姿を聞くことや見ることなどできるはずもなく、いつも答えを知ることはできなかった。


「やった……」
 彼はポツリとつぶやいた。
 さっきやっと全ての砂を埋めたみたいだ。
 本当に全ての砂を埋めたのかはわからない。
 もしかしたら彼が知らない場所で砂化してしまった人もいるかもしれない。
 しかし彼の満足そうな顔を見て言いたくなった。
『おめでとう』
 すると青年は微笑み「ありがとう」と返してきた。
「ずっと一緒にいてくれたよね、ぼくわかってたよ」
 私は黙る。
 彼が言ってることがうまく理解できなかった。
 彼はまた土を掘りながら話し続ける。
「何回かぼくに話しかけてくれたよね、無視してごめん。でも、ぼくがしたいことを誰かに話しちゃうと負けちゃいそうな気がしたから」
『負ける?』
 誰もいないのに一体誰に負けるというのだろう。
「自分にさ、自分以外の誰かに言ってしまえば『きっとぼくの代わりに誰かがやってくれるだろう』って思ってしまいそうだった」
 彼は土を掘る手をやめない。
「ヒトって、すごく勝手だったよね、欲しいものを欲しいだけ他からぶんどっておいて、それに飽きたら捨ててた。死んだら死ぬだけで他のことは何も考えやしなかった。それじゃあ他のみんながかわいそうだよね」
 彼が他のみんなと言いながら私の方を見る。
「ぼくは砂を消す方法なんて知らないからこんなことしかできなかったけど――」
 少年はやっと手を止めた。
 穴はそこそこ大きく人間が座れば埋めることも可能な大きさだ。
「ねぇぼくも人間だから勝手なことを言うけど、いいかな?」
『……』
「ぼくが砂になっちゃったらきみが埋めてね」
 そう言ったとたん青年の体は全て砂になってしまった。
『……』


 人間っていうのはよくわからない。
 どうして彼は私を見ることができたんだろう。
 私は兵器で人間を砂にするのが役目だった。
 しかし人間はこの世界にいなくなった。
 私はここを埋めることができるのだろうか?
 もしここを埋めれてたとしてもその埋めたあと私はどうすればいいんだろう。
 もし私が、生きる希望をなくしたら人間ではない私はどうなるんだろう。

 私は世界で一人ぼっちになってしまった。

兵器少女。

兵器少女。

高校2年生頃。後先考えてなかった。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-10-28

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