舞台は、起源をを同じくする二つの国――楼蘭(ろうらん)と紗那(しゃな)。 この場所でかつて繰り広げられた戦役は、今も人々の胸に大きな爪痕を残していた。 互いの歴史に秘められた謎。 周到に仕組まれた飽くなき陰謀。 暗躍する不穏の影。 引き裂かれた心…。 不思議な縁(えにし)に導かれた者の新たなる戦いが、今再び始まろうとしていた――。
熱帯夜。エアコンも明かりもつけずに暗い部屋に横になっていると、ベランダにある訪問者が現れる。 モリ君と名乗る、巨大なコウモリだった。なんとも礼儀正しく腰がやわらかいモリ君は、横になってるりょう君を夜の飛行に誘う。 ぎらぎらした繁華街の明かり。夜に生きるようになっているコウモリ君にとって、昼のようなネオンの明かりはつらいということ。 りょう君は森に行くことを提案したが、モリ君はその森から来ていた。かつての森と違い荒れ果てた森は、食料もなくただの闇へと化していた。だからやむなく街に降りてきたのだと。しかし、それらを一切責めず自分たちの判断だというモリ君。 そして、自分たちが昼の明るさが怖いのは、暗さばかりをみているからだと。その逆も当てはまり、明るさ・暗さどっちかばかりを求める者にとって、その反対のものには恐怖を覚えると。だからたまには逆さになるといいと伝えて去っていく。
ある者は夜な夜な夢を見る。それは自分のものではない。 朝になると一日を掛けて夢の内容を本にまとめる。 いつしかその者は、生き永らえた日数に匹敵する冊数が蔵書される館の長になった。
褐色の召使い ジナダーサと、二十一歳になった角川奈々の、危険な物語。褐色の召し使い ジナダーサと、二十一歳になった角川奈々の、危険な物語。褐色の召しつかい ジナダーサと、二十一歳になった角川奈々の、危険な物語。
時は西暦231年。蜀軍と魏軍は天水で対峙していた。大軍同士で互いに動けぬ中、王平が蜀軍兵糧庫に奇襲をかけてきた張郃を討ち取った。これを機に魏延が総攻撃を唱え、総帥諸葛亮はついにそれを許す。漢王朝の復興をかけた戦いがいよいよ大詰めに入る。
長瀬が作家になりたいと思ったのは、中学二年の時だった。たまたま見ていたテレビで、流行作家の谷川新之介の自宅訪問をやっていた。都内の一等地に豪邸を構えている割には、本人はボサボサの髪に無精髭、ヨレヨレの和服をだらしなく着た、冴えない中年…