明るさが君を傷つけたとして、僕はそれを恨むだろうか。暗さが君を引っこ抜いたとして恨むだろうか。 なんで隣にいて、何もできなかったか後悔するのだろうか。恨みもするし、後悔もする。 しかしその起伏を起こさせる物事は、常に規則正しく世界を回っている。 メビウスの輪のような世界に、いつの間にか誘われ入り込んでしまっている。 僕は、色んな葛藤をしていく。陰陽は常に、悠然とただ回っている。 見るたびに僕は思い起こすことになるけれど、いつか忘れて見ることという行動だけが、残る。 そしてなんて綺麗なんだと思うだろう。その両極があってこその世界なんだ。 そしてまた同じことを繰り返していく。それもまた綺麗なことだ。
思いもかけないで半身不随になった若い啓子と、「認知症」と陰でささやかれる横溝老人と、西域シルクロードへ二人旅行を。夢はふくらむ ...... 〔完結〕 有女同車 の標題で掲載中のサイトあり
【聖ベルサレム学園】 通称『ベル学』 広大な敷地を有するここは全寮制でミンション系の学園。 この学園は去年まで別の名で呼ばれていた。 【聖ベルサレム〝女学園〟】 そう、去年までこの学校は女子高だったのだ。 『ベル学』の生徒数は約一二〇〇人。 内、男子生徒の数はたったの……四人。 そんな学校に理不尽な親のせいで無理矢理転入させられた一人の男子生徒がいた。 彼の名は【八園寺 統志朗《はちおんじ とうしろう》】 彼には一つ、どうしても苦手はものがあった。 それは『オンナ』 過去の経験により、『オンナ』を嫌い、『オンナ』を避けて生きてきた。 そんな彼が去年まで女子高で、しかも男がたったの四人しかいない学校でどうやって生きていくのか。 そして彼の『オンナ嫌い』の行方は……。
『書記長室』と書かれた部屋のドアがノックされた。「いいぞ、入りなさい」「書記長、失礼いたします」「ああ、おまえか。今度はどんな揉め事だ?」「用件が揉め事だと、よくおわかりになられましたね」「これだけ続けば、わしだってわかるわい。で?」「また...
周りは若くして結婚していくも、焦燥感は感じない、女の子が大好きな若手のイラストレーター香月結(23歳)。 一生独身同盟を組んでいた親友の琴江心優(23歳)も、遂には恋人が出来る。 そんな香月に、すっかり大人になってしまった中学時代の先輩、大宮結城(25歳)がある日突然、恋を買わないかと持ちかけてきた。 香月の過去に出会った許嫁等も取り巻く純愛恋愛小説。
松林にいる僕はありんこを眺めている。ありんこは自分の体の倍以上もある荷物を忙しなく運んでいる。 自分の指人形でもすぐの距離を、せかせかと休むことなく運んでいく。 手を地面に当てると、周りのぬるい空気とは異なりひんやりとする。松葉が落ちて地面にも刺さる。松葉の絨毯。 地面からあげた手を見つめると、砂がついている。 けれどすぐに乾き、風に吹かれるまま手の上で砂は踊りだす。 皺のないところについていた砂だったけれど、砂はあっという間に皺の線に沿っていた。砂でさえも、既存の線に沿うのかと、僕は手を握り締める。 そのころにはありんこは見当たらなくなっていた。