肉体の死を迎えた16歳の主人公・野原小陽(のはら こはる)は、「心界(しんかい)住民課案内員・日向三郎(ひなた さぶろう)」と名乗る青年に導かれ、「心体(しんたい)」と呼ばれる、いわゆる魂だけの存在になって、心体の暮らす世界・心界へと引っ越した。 心界・・・そこは、肉体を持つ人たちがごく普通に生活するのと全く同じように、心体たちがごく普通に生活する世界。 しかし、小陽は、自分がそれまで暮らしていた、肉体を持つ人たちの暮らす世界・物界(ぶっかい)に残してきた家族のことが心配すぎて、心界になじめず、大罪を犯してしまう。
太平洋戦争最中の昭和十八年、軍靴の音が葉山と村上が在籍する大学にも響きわたり、二人はおちおち机に向かっていられなくなった。村上が滞在する下宿の娘の和子に葉山は強い興味を示す。二人は徴兵されて兵学校に入るが、キリスト教徒の村上は西洋の邪教を信じていることを理由に上官の激しい体罰に会う。やがて二人は戦闘機搭乗員として巣立つが村上は特攻隊に無理やり志願され沖縄に向かう。卓越した操縦技能を持つ葉山は支援機の搭乗員として村上たちの特攻機を掩護するが、二人とも米軍機に撃墜され村上は戦死、葉山はかろうじて助かった。8月15日の終戦の朝、今度は特攻機の指揮官として攻撃命令を待つが、天皇の玉音放送で戦争は終結する。戦後、東京の焼け跡で和子に再会した葉山は実家に連れ戻り世話をしていたが、村上の戦死を弔うため訪れた横浜の教会で和子にプロポーズする。
日比野俊介は地方紙の新人記者として尾道の通信部で取材活動をしていた。仕事に追いまくられて女性には全くの無関心。そんな俊介を下宿の万里子がまとわりついて俊介に好意を示す。広島に転勤した日比野を追いかけて万里子は俊介と所帯を持つ。一人前の記者として著しく成長した俊介だが激務がたたって体を壊し、夫婦で三次通信部に転勤する。俊介を待っていたのは多数の死者をもたらした三次市の大水害。家族を危険にさらした記者生活に疑問を感じた俊介は、新しくできた広島のテレビ局に移る。やがて俊介はニュースキャスターに抜擢されて茶の間の顔になる。
真っ直ぐな道を歩いていたはずなのに、いつの間にかその道はねじまがっていました。 気づかないまま、ヒメは輪の中へと迷い込んでしまったのです。
気がつけば僕はひとりで立っていた。 自分の足で立っていられたことが怖ろしかった。