インテリア・デザイナーの信次は、静かな床屋へ散髪をしにいく。あれこれ話しかけられることを苦手とする彼は、この床屋を気に入っている。 髪を切る、チョキチョキというハサミの音の向こうから、覚えのある声が、ラジオから流れている事に気付く。 ファンキー・フライデーを聴きながら、昔の事をぼんやり思い出し、思わず苦笑する。
妻の葬儀の日、突然十年前に教育実習で出会った教え子が、両親の虐待から助けを求めて会いに来た。幼子を一人抱えた中で奇妙な三人暮らしが始まる。 お互いの深い傷を知るうちに、ぬくもりを求め繋がりあう二人。 しかし二人の痛む心を癒す時間は、せまりくる闇におびやかされてゆく……。 苦しくて切なくて、求め続けて。 やっと触れた指先を二度と離さないようにずっと手をつないでいて。 そんな想いで書いたストーリーです。