「さて、何をするか」
富田は前向きな人ではなく、下向きな人だ。いつも俯き加減で歩いている。
古い農家がまだ残っている田舎の町を高橋は歩いている。メイン通りから外れた旧道は映画のロケにでも使えそうだ。
「日が低くなりよった。こんなに影が伸びておる」
これは怪談話なのだが、はっきりとしない話だ。まあ、幽霊など、はっきりとした存在ではないので、そんなものだろうか。
最近部屋に籠もりがちな友人を木下は訪ねた。
想像したものと、実際のものとは違うことがある。実物や、その現実を直接見ていないのだから、当然だろう。
少し古い時代の本を読んでいると、感覚のずれを感じる。そんな大昔の本でなくても、十年を越えると、そうなりやすい。
「最近やり方が変わってねえ」
気のせいだと思う。何かいるようなのだが、そんなものがいれば大変なことになるだろう。