しんと静まりかえっている。自分の部屋だ。
妖怪博士付きの編集者が玄関から声を掛ける。
公園の東屋にあるベンチでの話だ。屋根付きの休憩所のようなものだ。
「昨日と違うことをするのが大層になりますなあ」
あのとんがった山というか、丘ですかな、それを右に見ながら、左側にある山塊との間を抜けますのじゃ。
「昔の記憶とね、今の出来事とが重なることがあるんだ」
妖怪博士付きの編集者が呼んでいる。
時代が次々と移り変わり、新しく新しくなってゆく。
キツネ目の男。昔あった犯罪事件の犯人像ではない。紛らわしいので、それを避け、キツネ顔の男と社内では呼ばれている。
雨が降っている。春の雨だろう。