カネってもんはよ、欲しがれば欲しがるほど逃げていく。ホントだぜ。おれだって、昔は宇宙海賊としちゃあ、ちっとは名の売れたお兄いさんだったが、もっともっと儲かってやろうと欲をかいたのがいけなかった。なんだよ。聞きたくねえのか。いくら焦って......
出勤前にざっとニュースだけ見ておこうと、斉藤はテレビの電源を入れた。ちょうど、いつものアナウンサーがニュースを読み上げているところだった。《劭吧E旻…妟た捷コ、燗ァ妍√そ宊…尬岔Bっ阨サ》「な、なんだこれ」 驚いたことに、アナウンサーが......
篠原が約束の喫茶店に行くと、すでに久保が待っていた。「おまえが時間前に来るなんて、珍しいな」「あ、ああ」上ずった声でそう言うと、顔を赤くした。明らかに様子がおかしい。向かいの席に座ると、篠原は店員にコーヒーを頼み、さっそく久保に尋ねた......
「あ、ども。わたくし、ラーメンは男のロマン、でお馴染みの、週刊ラーメンロマンの笠井と申します」「うむ」「えっと、インタビューの申し込みをさせていただいていたと思うんですが」「ああ、聞いとる」「ども。では、早速ですが、始めさせていただきます......
そこは小さな町工場だった。もう日が高くなっているというのに、シャッターは降りたままだ。そのシャッターの前に軽トラがとまり、作業服を着た中年男が降りた。何故か険しい顔をしている。閉まったままのシャッターを睨んだかと思うと、手のひらでガンガン……
(どうして、こんなに後味の悪い絵本を出すのかしら?)帰宅途中、行きつけの本屋で何気なく手に取った絵本の結末に、早苗は衝撃を受けた。(そりゃ、最近は大人でも絵本を読む人が多いっていうけど、メインの読者は小さな子供じゃない。こんなの読んだら......
【第一の相談者:二十代男性社員】わっ、ホントにロボットでやんの。え、ああ、うん、聞いてるさ。見かけはどうあれ、最新鋭のカウンセラーマシンなんだろ。でもさ、最初に全社員の現状を知りたいから、何でも不満をブチまけていいよって人事課長は言ってたけど......
井上にとって初めて訪問する相手なので、手土産でも買って行こうと、ショッピングモールに立ち寄ったのがいけなかった。立体駐車場を出る際に、螺旋状の通路をグルグルグルグル回ったせいか、カーナビの道路表示が微妙にズレているのだ。ナビの画面上では......
都内某ホテル。会議会場の入口に『重大発見に関する記者会見』という表示が出ていた。会場の中にはたくさんのイスが並べられ、すでに大勢の記者たちが座っていた。彼らの正面にあるテーブルには所狭しとマイクが林立しているが、肝心の主役はまだ来ていない......
昼食のあと、休憩室で仮眠をとるのが緑川の日課だった。緑川の会社では男女それぞれの休憩室に喫煙ブースと横臥用の畳室がある。禁煙して三年になる緑川は喫煙ブースには用がないので…