現代志異
(作者註:原文を日本語訳したものです)
「嗚呼、誰ぞ我が恨みを晴らさん乎。かの傍若無人な奴に一泡吹かす者やあらん」
そう嘆きしは、名を伸伸(シンシン)という十歳の少年である。
生まれつき要領が悪く、近所の悪童どもから侮りを受けている。
今日も、悪童頭の巨猛(キョモウ)から遊具を取り上げられ、泣いて自宅へ戻ったのである。
「我を救う者、在りや無しや」
すると、驚くべきことに、伸伸の机下より青い大熊猫が現れた。
「我が名は度羅(ドラ)なり。汝の子孫より使わされし機械獣である。願い事を言うがよい」
「おお、これぞ天の助け。巨猛に奪われし、我が遊具を取り戻さん乎」
「もとより望むところ。我が腹袋中に道具あり。これにて悪童を退治せんと欲す」
度羅は腹袋に手をさし入れ、大きな木枠のごとき道具を取りいだした。
「これなん自由自在扉なり。これにて、かの巨猛宅に乗り込まん乎」
「心得たり」
伸伸は扉をくぐりたりしが、いかなる不具合があったものか、別宅へと出現せり。
今、将に入浴せんとする乙女ありて、非難の声を上げたり。
「何たる無礼。汝は伸伸、変態漢なり」
「源静(ゲンセイ)、誤解なり、誤解なり。許したまえ」
伸伸は蓬々のていで逃げ帰った。
この後、伸伸と度羅の奇妙な友情譚が始まるが、それはまた後日。
尚、某国にも似たような話があるやに聞くが、これは古くから我が国に伝わる固有の話なり。
(おわり)
現代志異