捨てられた都。 忘れられた遺跡たち。 ひとつの文明が母なる大地に抱え込まれ、ひっそりと息をしながら長い眠りについている ──そんな静けさがある
杏樹。君が何かを隠していることは、寮のみんなが知っていることだよ。だが、誰もあえてそれを聞こうとはしない。寮にいるやつらはみんな人に言えない秘密や悩みを抱えているからな。──だが、君は少し違う
いいか。ここは墓なんだ。さっきだってあれだけの骨が転がってたんだぞ。生贄にされた霊もいるんだ。幽霊なんてそこら中うようよしてるんだよ
「僕はこの古代文字の解読をしたいんだ。君にできるか? 頭を使えないなら、君は体を使う。──それでいいだろう」 杏樹はあっさりとした口調でそう言ってのけた。麻柊は歯を食いしばり、拳を握りしめた。おそらく『玲』には麻柊を挑発するつもりはない。