夜風に薄れ
懐かしい 子供の頃に読んだ本
どうして見なくなったんだろう
ああ あんなに破けるほど読んでいたのに
人はやつれ 変わっていく
いらないことを覚えて気付けば老いていく
夜の街を見つめて
溜め息を吐くたび
景色は滲んでいく
もどかしい 記憶の山に埋もれた想い
どうして忘れてしまったんだろう
ああ あの時枯れるほど泣いていたのに
人はいずれ 終わっていく
どんなことをしたとて答え合わせは無く
生き様を様にして
生きている間に
日没が訪れる
人は追われ 辿り着く
いろんなものを手にして何かを置いていく
誰もそれが必要
だったとは気付かず
最期は酔いしれる
春は空に散って
夏が頬にそよいで
秋に何かを悟って
冬に終わりを告げる
私は夜風に薄れていく
少しずつ
夜風に薄れ