素直な感情表現をできないぼくは、そのことによって他者を傷つけ既に己さえも傷つけていることを知っている。 女の思いやりを返せないぼくはどこかで何かを無くしたのだろうか。
抜け忍のヒアシは、甲斐府中で、無足と言う男に拾われる。デマとはったりで世を渡り、怪しい情報を頼りに命を賭けるその男はまさに、乱世のくわせ者だった。その無足が狙うのは、あの武田信玄が秘蔵する占い師、「件(くだん)」。かの川中島の惨劇を予言したというその男を盗み出す為、厳戒態勢の敷かれる甲斐武田の都で、信玄と無足、知恵と命を賭けた騙し合いが今、始まった。 いわゆる歴史ミステリーです。
芸術学部への進学を目指し、毎日近所の湖でスケッチをしている茂里。夏休みのある日、彼女は湖上に立つ八重垣姫を写真に撮る恩田志朗と出会う。 八重垣姫が誰なのか知らない茂里は、生粋の地元民である親父に話を聞く。以来八重垣姫はたびたび茂里の妄想に登場し、恋愛について口を出すようになる。 ある日茂里がいつものようにスケッチをしていると、足の悪い男が近付いてくる。するとその男との接触を阻むかのように、一匹の白蛇が茂里の前に現れる。