一話完結です。「ぼくは覚えている。 蝉の喧しい茶色い肌の傾斜を、まだ成熟しきらない関節に力を込め、緑の中心を目指している。大気が孕むひりつく熱は、互い違いに並ぶ樹と、それらが蓄えた葉に遮られている。山毛欅と櫟の卵塊が散り乱れる、その地の表に、綺羅と……
ハヤブサさんが某国のお姫様を、ボディーガードするお話です。頑張る人の姿を書きたいと思っております。よろしくお願いいたします!
その春、僕は告白が出来なかった。春と言っても、それは入学式ではない。入学早々、一目惚れをしたもんだから真っ先に告白をしに行ったというわけではないのだ。 でもそれになぞって例えるならそれは、 『真逆』 だと思う。 春、 三月、 卒業式、 まだ桜の花びらが舞う中学校で、僕は卒業式に好きな女の子――咲《さき》――に告白をしようとしていた。