――『愚者』とは、二十二枚のタロットカードの内、もっとも初めに位置するカード。正位置では『自由』などの意味を表し、また逆位置では『愚考』という意味も持ちます。これより紐解かれるのはある少年の物語。その長き流浪の中で、彼が導き出した答えとは。
AdeleのHelloという曲を、皆様聞いたことがありますか? 自分の内側のもうひとりの自分に向けて歌った曲だと解釈して、そこから想像して作った長編小説です。
高校から大学、そして社会人に。人々は他者が抱く思い出とは異なった道を歩む。ここに、高校生のときに願った望みを、自らの手で壊した一人の人間がいる。善意を持ちながら、それでも人を、自分を不幸にする者の物語。
一話完結です。「佐藤くんは今日も練習している。昨日も練習している。たぶん明日も練習する。練習ばっかり。汗いっぱい流しちゃって。タオルなんか、いつも汗くさくて。ふつうの人はそんなに汗かかないよ。汗かかないように気をつけてるよ。でも佐藤くんは汗を気にしない……
一話完結です。「ぼくは覚えている。 蝉の喧しい茶色い肌の傾斜を、まだ成熟しきらない関節に力を込め、緑の中心を目指している。大気が孕むひりつく熱は、互い違いに並ぶ樹と、それらが蓄えた葉に遮られている。山毛欅と櫟の卵塊が散り乱れる、その地の表に、綺羅と……
その春、僕は告白が出来なかった。春と言っても、それは入学式ではない。入学早々、一目惚れをしたもんだから真っ先に告白をしに行ったというわけではないのだ。 でもそれになぞって例えるならそれは、 『真逆』 だと思う。 春、 三月、 卒業式、 まだ桜の花びらが舞う中学校で、僕は卒業式に好きな女の子――咲《さき》――に告白をしようとしていた。
どこからともなく聞こえる「人類を救え」という言葉に命じられ、奇跡を実行していく瀬底に、それを目の当たりにして驚嘆する空手家大城の二人の織りなすコメディ