一話完結です。「ぼくは覚えている。 蝉の喧しい茶色い肌の傾斜を、まだ成熟しきらない関節に力を込め、緑の中心を目指している。大気が孕むひりつく熱は、互い違いに並ぶ樹と、それらが蓄えた葉に遮られている。山毛欅と櫟の卵塊が散り乱れる、その地の表に、綺羅と……
その春、僕は告白が出来なかった。春と言っても、それは入学式ではない。入学早々、一目惚れをしたもんだから真っ先に告白をしに行ったというわけではないのだ。 でもそれになぞって例えるならそれは、 『真逆』 だと思う。 春、 三月、 卒業式、 まだ桜の花びらが舞う中学校で、僕は卒業式に好きな女の子――咲《さき》――に告白をしようとしていた。
水南斗は、バタフライが得意な高校2年生。 竜神高校競泳部に所属し、インターハイ出場を目標に猛練習の日々を送っている。 競泳部は実績のある強豪で、練習は決して甘くない! 顧問兼コーチのゴリラは厳しいけど、部員思いで頼れる存在。 入船先輩は優しいけど、ちょっと取っ付き難い。 峰岸先輩は負けず嫌いの自信家、でも本当は熱血兄貴タイプ。 ある日、競泳でトップの実績を持つ森之宮学園から太陽が転向してくる。 水泳に命を賭ける水南斗と太陽はすぐに意気投合し、恋愛したり、バカやったり、時には涙を流すほど熱い毎日を過ごしていく……。 煌くような青春の日々に、10代が抱える人生への葛藤を交えて、全23話(毎週水、土曜更新)でお届けします。 ※ゲイ小説。この物語はフィクションです。実際の競技会運営、指導法、選手のスキル習得等については実際と異なる可能性があります。
最強のサイキックと呼ばれ、名を隠しながらサイキックの少年少女を手助けする女性がいた。四人の関係を見た彼女は、彼らに休息を命じる。 「子供らしいことをしなさい」 そう言った彼女は、四人の少年少女に様々な条件を付けた。その一つに、男女二人で一組ずつに分かれて行動せよというものがあった。 星をみるひとの二次創作です。しば×あいねのカップリングものです。 微笑ましいほのぼのを目指しましたが、二人とも頭が回るため妙な方向に議論が進みます。
学生時代からの恋人である聡と沙耶。結婚によって何かが変わるとは思えないまま交際年月を重ねてしまい、そういった退屈さから逃げるため、聡は浮気を繰り返していた。 同棲を始めてから五年目、夏休みの終わりにペットの文鳥が死んでしまう。それを機に沙耶の心境にも変化が起こり始め、また、聡の勤務先である小学校では「著者不明の書籍への読書感想文」が提出され、校内に不穏な空気が漂い始める。そんな折に、アイドルオタクの同僚が問題を起こしてしまい……。 そんな壮年期にある現代人の心境と、何事かに囚われて生きる人間への救済について書きました。 えっちな描写が多いです。
約五ヶ月ぶり、待望(誰が?)の続きが書き上がりました。結構メロウな話になってますのでご覚悟の上お読みくださいね。
2017年11月発行「清澄 VOL.2」収録。「ボクはコッダカネリエ。群生クラゲ型地球外生命体だ」卒業生を名乗る不可思議なETはかつての友人の秘密を求める。キーワードは「秘密を隠した夜のプール」……青春の幻想奇譚。
1974年10月から翌75年3月までの半年間アジアを旅した。旅に特別な目的も目的地もない、風任せ、運任せのヒッピー旅行だった。歩いたのはフィリピン、タイ、インド、スリランカ、ネパールの5カ国だ。 その頃のアジアは、ベトナム戦争が最終盤を迎え、カンボジアではクメールルージュがほぼ全土を制圧していた。パキスタンからの独立を果たしたバングラデシュは混乱と貧困にもがいていた。私の訪れた5カ国はこれら3カ国に比べればはるかに平和だったが、発展途上にある国らしい希望と欲望と熱気と貧困が充満していた。 これらの国を歩いた半年間は平凡極まりない私の人生で最も躍動感あふれる時間であり、唯一の宝物と言えるものだ。私が歩いた同じ頃、沢木耕太郎氏がアジアからヨーロッパまで流浪の旅をし、「深夜特急」という名著を執筆されている。尊敬する沢木氏に敬意を表しつつ、私のささやかな「深夜特急」を記そうと思う。
人工弁を埋め込まれて、職場復帰を果たした主人公。無理をしない事が最も大事な事なのに、つい無理をしてしまう出来事が波のように押し寄せてきて……ついぞ負けてしまって、突然もとの世界に送り返されるような、そんな話です。謎の病気「GIST」の疑いもかけられてしまう訳ですが……。今回は、退院以降に訪れる喜怒哀楽の荒波に翻弄されながら楽しんでいる主人公が、再入院に消されゆくロウソクの炎のような輝きを放っているところが、はかなくて良いかもしれません。
「知ってましたよ。カナタさんは優しいんです」 極力人間関係を絶ち、コンピュータの前で日々を過ごしていた少年・カナタのもとに来訪者が現れた。 そいつは電子の世界から、流れ落ち、彼の生活をかき回しいく……これは強がりな少年の心を砕く物語。 後編→https://slib.net/74700