タウン誌で小さなカットなどを書いている立花は、ある日、取材に行くことになった。カットの仕事ではなく、グルメ特集の記事として。
「ついこの間まで、椿を見ていました」
「お盆になると先祖の霊が帰って来ると言いますが、どうなんでしょう」
「涼しくなってきましたなあ」
散歩者は散歩者を知る。
ある夏の日曜日、部屋が暑苦しいので吉田は町に出た。
「この町の盆踊りは怖いですよ」
「夏の思い出ですか」
調子の良いときは逆に駄目なことがある。その逆側は調子の悪いときだ。しかし、調子の悪いときに何かをするのは、しんどい話だろう。
田舎の道を路線バスが走っている。道は白い。未舗装のためだ。白い道は夏草の中、灌木の中を走っていく。そして林の中に入ると蝉時雨。