「今年は花見に行かれましたかな」
「暑いですなあ」 「まだ、春先なのにな」
雨が降る坂道だ。その丘の上にイラストレーターの家がある。坂道を徒歩で上がって行くのは老いた画家。
「春になると眠くなります」
武田は懸命にやった仕事なのに評価されず、腐っていた。
「雨が降ってますなあ」 「珍しいことじゃない」
不安な状態になっていると、その副作用が出るようだ。
妖女。そう呼ばれるまで、かなり時間がかかった。
「イメージというのは変わりますなあ」
「一時間間違えると、大変なことになりますなあ」