風に吹かれて

川崎ゆきお

 風の強い日だった。
 竹村はそういう日に歩いている。敢えてそんな日を選んだのだ。その理由は祓うためだ。
 季節は花粉が飛ぶ頃で、そちらの方を振り被るのだが、それは家に戻ったときには払わない。そんなものはいくら被ってもかまわない。花粉アレルギーがないためだ。しかし多少は鼻がむずむずするが、大したことではない。
 風の強い日を選ぶのは憑き物を祓うためだ。風の強さで剥がれてくれる、または吹き飛ばしてくれると信じている。
 竹村は何が憑いているかは知らない。しかし、何か悪い物が憑依しており、それが体にしがみついているのではないか、あるいは被さっているのでは……と思い込んでいる。だから、どんな形なのかは把握していない。映像化も出来ていない。
 ただ、風で吹き飛ばしてくれるのではないかと、解決方法だけは不思議と知っている。どうして知ったのかは分からない。感じでしかない。そう感じるところの根拠はないが、確実にそう思えるのだ。感情的事実の方が大事なようだ。
 竹村は若い頃はバイクに乗り、それで吹き飛ばしていた。これで祓えたのだ。しかし、車に乗るようになってから、なかなか取れない。年老いてからは自転車に乗るようになったので、風を受け、篩い落としていた。最近は徒歩が多い。これではあまり効果がない。そこで風の強い日を狙った。
 その感じでは台風の日に外に出そうな勢いだが、雨が降っていると駄目らしい。濡れるのが嫌なのではなく、湿っていると祓い落とせないためだ。これも感じでしかない。
 しかし、その感じを信じているのは、答えが出るからだ。ある日、偶然風の強い日に外を歩き、戻って来ると軽くなっていた。憑き物に重さがあるのかどうかは分からないが、祓えたと竹村は感じた。これは事実なのだ。
 それがあってから、風の日を狙うことにした。前回祓えても、また憑くからだ。それが溜まる。だから、たまに祓い落とさないと溜まりすぎる。重くなりすぎるのだ。
 そして、あまり善いことが続かなくなり、悪いことばかりが増える。これは悪い物が憑いているとしか思えない。
 竹村は厄年には厄払いをするし、その他ややこしいものを祓ってくれるような寺社などにも願を掛けた。また先祖の墓にも参ったし、仏壇には毎朝新しい水を供えている。しかし、効果はない。
 やはり物理的に払うのが良い。それが結論だ。そして、風を利用しようとした。これは具体的だ。
 その後、強い風に吹かれると悪い物が吹き飛ばされるようで、これが一番だと確信した。
 そして、今日は風が強い。従って、外に出て、風浴びに出たのだ。
 風に吹かれて……と呟きながら。
 
   了

風に吹かれて

風に吹かれて

風の強い日だった。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-03-26

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