何か神秘は隠されていないかと高橋は常日頃から目を光らせている。
町外れに古い松が何本か植えられており、小さな古墳のような丘になっている。
そこは何処なのかはおおよそは分かっているのだが、特定しにくい場所にあった。
岸田老人はアウトドア派だ。山や野に出るハイカーではなく、町歩きだ。部屋にいないだけのアウトドアで、家のドアのこちら側かあちら側かの違いだ。
幽霊のことばかり考えたり、思ったりと、意識しているときは幽霊がよく出る。
暑い盛り、老婆が歩いている。日傘も差さず、頭部に被り物もしていない。祈祷師の婆さんだ。
テレビを観ていると、歌謡番組をやっていた。そして年輩の女性歌手が歌謡曲、演歌を歌っていた。
夜に笛を吹くと魔物が出て来ると言う。魔物を笛で呼び出すのだろうか。
炎天下、多くの老人が歩いている。徒歩もいれば自転車もいる。服装はカジュアル。夏向けに、少しでも涼しくなるような物を選んでいるようだ。
「いつ頃から老人になったのかを考えていた。いや、思い出していた」