私の目の前を魚が泳いでいた。 落ち着け。そんなことがあるわけがない。 目を閉じて深呼吸をする。 そしてそっと目を開けてみる。 いた。幻ではない。 どうしてこうなったんだ。 私は数分前のことを思い出してみる。
「レディイス、エァンド、ジェントルメン!」 半径100メートル程度の暗闇のドームに、ノリの良さそうな若い男の声が響く。 「今夜もやってきました! ザ・バトルショー! さて、まずは本日の挑戦者の登場だ!」 直後、ドラムロールが鳴り響く。そして一糸乱れず音が止まる。 「棕櫚の箒にまたがる現代の魔女っ子、ハニィィーちゃん!」
私は丘の上に住んでいる。 左右は高い山、後ろは強く風が吹き付ける切り立った崖。 こんな所に住もうなどと、昔の私だったら思わなかっただろう。 しかし、今の私はここでの暮らしを気に入っている。 なぜなら私にはかけがえのない友人たちができたからだ。
私のクラスに転校生がやってきた。 「ハーイ、ワタスィのナマエー、ミゲルとイイマスー」 日本語だ。こいつ日本語を喋るぞ。 「ワタスィー、ナンバンからキマシター」
「うー、寒いなぁ」 私は自宅に入ると家の中心に鎮座している七輪に火を入れた。 この家にエアコンなどという高価な暖房器具は無い。あるのはこの年季の入った七輪だけだ。
「ねえ、真也。小学校の頃のワンタン事件って覚える?」 「んー? あぁー、あの事件か」 居酒屋の密集した線路下の裏路地で、俺は小学校の時から同級生だった薫と会っていた。
それは光の矢のように見えた。 腹の底から響くような轟音。 とっさに腕で顔を庇うが脇ではじけ飛んだ木材の破片が体中を切り刻む。 「ぐぅああああぁ!」 衝撃で数メートルは飛ばされただろうか。それでもすぐにその場から転がるように飛びのく。 瞬間、白い棒状のものが今までいた場所に突き刺さる。再び襲い掛かってくる木材の破片を京介は地面に伏せることで何とかやりすごした。
「――アメリカが謎の生命体集団から襲撃を受けたことを皮切りに始まった世界的防衛戦は幕を閉じました」 司会者でもある初老の老人が通訳を脇に立たせながらスピーチをしている。