1974年10月から翌75年3月までの半年間アジアを旅した。旅に特別な目的も目的地もない、風任せ、運任せのヒッピー旅行だった。歩いたのはフィリピン、タイ、インド、スリランカ、ネパールの5カ国だ。 その頃のアジアは、ベトナム戦争が最終盤を迎え、カンボジアではクメールルージュがほぼ全土を制圧していた。パキスタンからの独立を果たしたバングラデシュは混乱と貧困にもがいていた。私の訪れた5カ国はこれら3カ国に比べればはるかに平和だったが、発展途上にある国らしい希望と欲望と熱気と貧困が充満していた。 これらの国を歩いた半年間は平凡極まりない私の人生で最も躍動感あふれる時間であり、唯一の宝物と言えるものだ。私が歩いた同じ頃、沢木耕太郎氏がアジアからヨーロッパまで流浪の旅をし、「深夜特急」という名著を執筆されている。尊敬する沢木氏に敬意を表しつつ、私のささやかな「深夜特急」を記そうと思う。
人工弁を埋め込まれて、職場復帰を果たした主人公。無理をしない事が最も大事な事なのに、つい無理をしてしまう出来事が波のように押し寄せてきて……ついぞ負けてしまって、突然もとの世界に送り返されるような、そんな話です。謎の病気「GIST」の疑いもかけられてしまう訳ですが……。今回は、退院以降に訪れる喜怒哀楽の荒波に翻弄されながら楽しんでいる主人公が、再入院に消されゆくロウソクの炎のような輝きを放っているところが、はかなくて良いかもしれません。
40代に入って、体力が落ちてきたり、酒に弱くなったりするのは当然だと思っていましたが、健康診断で心臓の肥大化や心電図の異常が指摘されることにより、自分の心臓が生まれながらにして通常の形状ではなかったことを知らされる。循環器内科に始まり、心臓外科を紹介されたりしながら、2007年8月20日を迎えます。全身麻酔、人工心肺、半日がかりの手術、集中治療室、と言葉では知ってはいても経験したことないことばかり……。