Fate/defective : regain ―プロローグ
この作品はyona氏(https://slib.net/a/7649/)の三次創作となります。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公――」
光が灯る。それは徐々に強さを増していき、薄暗い部屋を煌々と照らす。
「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
風に吹かれた髪が大きく揺れる。目を閉じた彼は、たとえ紙片が舞い上がっても気に止めなかった。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」
突き出した手は熱を帯び、脈動と共に全身を何かが流れていく。だが悪い感覚ではない、ただ身を任せるには心地良いと思った。
「――告げる。」
一呼吸、息を吐いた。間違えないように、躊躇わないように、続く言葉をゆっくりと並べる。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。」
―ああ、でも。本当にこれでいいのだろうか。
たった一瞬過った迷いが、僅かに思考を引き止めた。それでも戻ることはできない。惑いながらも、彼は最後の言葉を紡いだ。
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」
真昼のように明るい部屋に、少しだけ震えた声が高らかに響いた。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」
―始まりを告げる光が、一層強く瞬いた。
Fate/defective : regain ―プロローグ