でっぷりと太り背も高い男で、リュックを背負っている。山登り用ではなくビジネス向けだ。
岸和田は火祭りに来ている。御札などを燃やす日だ。
「一日百円ほどと思うが、十日で千円。月に三千円。年では三万六千五百円になる。これはまとまった金だ。一寸したものが買える」
「夢を見ていると、あの世界は何だろうかと思うことがあります」
奥田はテレビを見なくなった。故障したからだ。そのまま放置している。
年が明けてからしばらく経つ。 「毎年正月気分が抜けなくて」
富松は画家からイラストレーターとなり、大成した。エッセイや小説が本になり、それも売れた。
「寒いですなあ」 「冬ですからね」
「心の闇とは何でしょう」 妖怪博士付きの編集者が聞く。
「間違いは誰にでもあるが……」