「過激なものばかり見ていると、穏やかなものに目がいきますねえ」
「はい、おかっぱ頭で着物の少女です」
「寒いですなあ」 「春先の寒さですよ」
冬場、黒川氏は一日中ホーム炬燵の中でじっとしている。
「また忘れたなあ」 買い物から戻った作田は呟く。
越塚は最近普通のことと異変との区別が付きにくくなった。これは日々の中での変化が少ないためだろう。
師匠とその弟子との対話だが、この師匠、それほど賢者ではない。
谷垣は雪降る町を歩いている。滅多に雪など降らない都市だ。
何もないような場所でも、その昔、人が住んでいたことがある。
日常というのは自分の内周の中にいる。そこは安定しており、居心地がいい。