下田は一人でバイクで旅行をしていた。区切りのいいところで宿をとろうと思っていたのだが、夕方前に山中に入り込んでしまう。
「行かなかった場所について考えていた」
老人が食堂街の通路に立っている。大都会のこの場所に来るのは久しぶりのようだ。
「あなたはどんな物語を持っていますか」
まだ現役のデザイナーのオフィスへ下村が訪ねた。同じデザイン系大学の同期生だ。
「君は自転車のカギをなくしたことはないか」
「年を取ると過去に向かうというのは本当ですか」
それは遠い時代のある一家の話だ。
「雑魚キャラの生き方があるんですよね」
ふと思い浮かぶ。 「それは何でしょうねえ」