一瞬、何もないことがある。頭の中が。
住めば都ではないが、今住んでいる場所が一番落ち着ける。
城のような大きな洋館が森の中にぽつりとある。というような風景は日本にはない。そのため、洋館を舞台にした怪談も少ない。
無人の町というわけではないが、通りに出る人が減っている。
師走のせわしい時期、前田のパソコンが動かなくなった。
真冬に雨。雪にならないのだから、それほど寒くはないのだが、清原は薄ら寒さを感じた。
「つまらん依頼じゃ」 妖怪博士は、そう呟きながら木枯らしの吹く屋敷町を歩いている。
「最近神社巡りをやってますか?」
親の背を見て子は育つというが、小西の親は猫背だった。
「寒いのに散歩ですか」 「日に当たらないとね」