飲み屋街は忘年会シーズンで何処も客が多い。
年寄り達が湯豆腐で忘年会をやっている。町内の散歩仲間だ。
六階建ての古いビルだが、とある会社の本社ビルでもある。その六階フロア全てが社長専用だ。
中村がホームゴタツで寝そべっていると、店員が起こしに来た。 「ミュージシャンの青さんが来てますが」
大晦日の夜。村岡は初詣に出た。除夜の鐘が鳴る手前だ。
「去年のことはどうですか」
「これは怪異談ではなく、笑い話なのだがね」 妖怪博士は苦笑いしながら語り出した。
「明け方の月を知ってますか」
「正月三が日はどうされていました」
「昼間のことが夜、夢となって出ることが多いです」